株式会社設立の総則
「設立」の規定は会社法第25条から第103条までありますが、この章の総則は第25条のみです。第25条の条文は以下のとおりです。
1.株式会社は、次に掲げるいずれかの方法により設立することができる。
(1)次節から第八節までに規定するところにより、発起人が設立時発行株式(株式会社の設立に際して発行する株式をいう。以下同じ。)の全部を引き受ける方法
(2)次節、第三節、第39条及び第六節から第九節までに規定するところにより、発起人が設立時発行株式を引き受けるほか、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする方法
2.各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければならない。
法律を読みやすくする方法
法律を読むときに色々前置きが多くて読みにくいという場面に遭遇します。そういうときは、まず、なるだけ省略して読みましょう。
例えば上記の(1)は
(1)次節から第八節までに規定するところにより、発起人が設立時発行株式(株式会社の設立に際して発行する株式をいう。以下同じ。)の全部を引き受ける方法
読みにくい箇所を省く (1)次節から第八節までに規定するところにより、発起人が設立時発行株式(株式会社の設立に際して発行する株式をいう。以下同じ。)の全部を引き受ける方法
(1)発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法
すると
「発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法」とわかり易くなりました。
これは発起設立のことを指しています。つまり普通の会社設立のことですね。
(2)も同じく、
(2)次節、第三節、会社法第39条及び第六節から第九節までに規定するところにより、発起人が設立時発行株式を引き受けるほか、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする方法
(2)次節、第三節、第39条及び第六節から第九節までに規定するところにより、発起人が設立時発行株式を引き受けるほか、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする方法
(2)発起人が設立時発行株式を引き受けるほか、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする方法
となります。
これは募集設立を指しています。
発起設立と募集設立は後ほど詳しく説明しますが、第25条1項は
「株式会社は、発起設立か募集設立の方法によって設立することができる。」
と言い換えることができ、設立方法について2者択一を定めています。
次に2項で、各発起人は一株以上の株を引き受けなければならないと定めています。
発起人とは「定款に発起人として署名をする人」と定義されますが、イメージとしては会社をつくる「言いだしっぺ」「旗振り役」みたいな人です。
慣れてきたら参照条文まで読むことが必要になってきますが、最初はなるべくアウトラインをつかむために必要な部分だけマーカーを引くなどして読みやすくしましょう。
色々脱線しましたが、なるべくシンプルに、時には図解を用いてわかりやすく進めて行きたいと思います。
設立の章は条文の理解が重要ですので、逐条的に進めて行きたいと思います。その際ある程度条文を省略していく過程もありますが、条文そのままの文章にも当たってくださいね。
【図解】株式会社設立の流れ
会社の設立は以上のような流れになっています。
まずは定款を作成し、公証人による認証を受けなければなりません。
一般的な株式会社を設立する場合には、ほとんどが「発起設立」によって設立されています。
また高額な現物出資などもそこまで多くは無いので、定型の事務作業で設立されることが多いです。
そこで基本的な設立についてイメージを付けた後に、イレギュラーなケースを学んでいくとよいと思います。
条文を読んでいると、条文の参照であちこちに飛んでいくので、一度全体図を把握してから条文に当ると良いと思います。
「募集設立」は手続きも煩雑ですので、あまり用いられない設立方法です。発起設立の説明を基本として、補足的に募集設立に触れていきたいと思います。
会社法については会社を経営する方がすべてを熟知する必要はありませんが、おおまかな全体像は知っておいて損はありません。
会社法は条文が多く、参照条文も多いので読みにくい=難しいという印象を持っている方が多いと思います。しかし同じような規定の使いまわしが多く、基本的な部分だけを把握するのはそう難しくありません。
株式会社の設立手順と注意点
次に具体的に株式会社を設立するに方に向けたお話しします。株式株式会社の設立は、多くの企業が選択する法的な形式です。このガイドでは、株式会社設立の基本的な手順と注意点を詳しく説明します。設立に際しての重要なポイントを押さえることで、スムーズなスタートを切ることができます。
1. 株式会社設立のメリット
株式会社を設立することには、以下のようなメリットがあります。
- 資本金の柔軟性: 少額からでも設立可能。
- 信用力の向上: 法人格を持つことで、対外的な信用力が向上します。
- 責任の限定: 株主は出資額を超える責任を負わない。
2. 設立前の準備
株式会社を設立する前に、次の準備が必要です。
- 事業計画の策定:
- 何をどのように行うのかを具体的に計画します。市場調査や競合分析を行い、ビジネスモデルを明確にします。
- 資本金の決定:
- 初期費用や運転資金を考慮して、適切な金額を設定します。資本金は事業の規模や性質によって異なります。
- 役員の選任:
- 代表取締役や取締役を選出します。役員は会社の経営方針を決定する重要な役割を担います。
3. 設立手続きの流れ
株式会社を設立するための手続きは、以下のステップに従います。
1. 会社名の決定
会社名は、他社と重複しないようにする必要があります。名前が決まったら、インターネットで同じ名前の会社が存在しないかを確認します。また、会社名には漢字やひらがな、カタカナを使用できるため、ブランドイメージに合った名前を選びましょう。
2. 定款の作成
定款には、会社の基本的な情報を記載します。必ず記載するものとして以下のものがあります
- 会社の名称
- 事業目的
- 本店所在地
- 発起人の氏名又は名称及び住所
- 出資される財産の価額又はその最低額
- 発行可能株式総数
3. 定款の認証
公証役場で定款を認証します。定款認証には、通常5万円程度の手数料がかかります。公証役場では、公証人が定款の内容を確認します。
4. 資本金の払い込み
発起人の個人口座に、資本金を払い込みます。通常は通帳のコピーを用いて払い込みを証明しますので、入金は定款作成後に行いましょう。
5. 設立登記の申請
会社設立に関する書類を法務局に提出し、設立登記を行います。提出書類には以下のものがあります:
- 設立登記申請書
- 定款
- 設立時取締役および監査役の就任承諾書
- 資本金の払込証明書
- 登録印鑑届出書
登記申請が完了すると、株式会社の設立が正式に認められます。
設立後の手続き
株式会社設立後には、いくつかの重要な手続きを行う必要があります。
- 税務署への開業届出:
- 税務署に開業届を提出し、法人番号を取得します。
- 社会保険の加入:
- 社会保険(健康保険・厚生年金)に加入します。労働者がいる場合は労働保険(雇用保険・労災保険)への加入も必要です。
- 銀行口座の開設:
- 会社名義の銀行口座を開設し、事業資金の管理を行います。
株式会社設立の具体例
事例1: 飲食店の経営
飲食店を開業するために、株式会社を設立する場合、資本金は300万円程度が一般的です。設立後は、保健所への営業許可申請や、税務署への開業届など、さまざまな手続きが必要です。
事例2: ITサービスの提供
IT関連のサービスを提供する会社を設立する場合、初期投資が少なく済むため、資本金は100万円程度で設立可能です。特に、インターネットを活用したサービスを展開する場合、事業計画が重要です。
まとめ
株式会社の設立は、手続きが多く、初めての方には難しいと感じるかもしれません。しかし、正しい知識と手順を踏むことで、スムーズに設立することが可能です。もしご不明な点や不安な点がありましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。
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