会社法条文から学ぶ定款の作成

定款の作成は第26条から。

会社法第26条(定款の作成)
  1. 株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
  2. 前項の定款は、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)をもって作成することができる。この場合において、当該電磁的記録に記録された情報については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。

第1項は、定款を作成するには発起人全員が署名(記名)押印をしなければ、ならないと書かれています。第2項は、電子定款で作成することが出来る旨の規定です。

定款とは何のために作るのか

定款とは会社の憲法とも言われ、根本規則が書かれたものです。
会社法より先に民法を学んだ方は、民法43条の次の規定を見たことがあるかもしれません。

民法 第43条(法人の能力)
法人は、法令の規定に従い、定款又は寄付行為で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

このように法人としての権利能力の範囲を定款で定め、権利能力の主体としての体を作るためにも定款は重要なものです。

定款は公証人の認証を受けなければなりません。これは定款の内容を明確にして後日の争いを防ぐためです。
これは会社法30条に記してあります。

会社法第30条(定款の認証)
  1. 第26条第1項の定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない。
  2. 前項の公証人の認証を受けた定款は、株式会社の成立前は、第33条第7項若しくは第9項又は第37条第1項若しくは第2項の規定による場合を除き、これを変更することができない。

原始定款とは

この会社法第30条1項の公証人の認証を受ける定款を「原始定款」と呼びます。

次に会社法第30条2項に規定されている内容を見てみると、 「認証後の定款は、株式会社の成立前は下線部を除き変更することが出来ない」と書かれています。つまり下線部についてなら変更できるという事です。

原始定款の内容を変更するには手続きを経て行う必要がありますが、変更時には公証人の認証は要りません。ここは注意してください

下線部の内容を追ってみると、認証後の定款は、株式会社の成立前は「変態設立事項について裁判所の決定に基づく変更」と「発行可能株式総数の新設、変更」しかおこなう事ができないとなっています。条文をたらいまわしにされますが、内容がわかった上で条文にあたると構造がわかりやすいと思います。変態設立事項は後で詳しく説明しますので、今はキーワードだけで結構です。

定款の記載事項

定款には以下の記載事項があります。

  • 絶対的記載事項
  • 相対的記載事項
  • 任意的記載事項

定款の絶対的記載事項

定款の絶対的記載事項とは会社法第27条と会社法第37条1項に記載があります。
それでは下記の条文を参照ください。

会社法第27条(定款の記載又は記録事項)

株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。

一  目的
二  商号
三  本店の所在地
四  設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
五  発起人の氏名又は

会社法第37条第1項(発行可能株式総数の定め等)

発起人は、株式会社が発行することができる株式の総数(以下「発行可能株式総数」という。)定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。

以上のように絶対的記載事項とは

会社法第27条の会社の目的商号本店所在地出資される財産の価額またはその最低額発起人の氏名又は名称及び住所と会社法第37条の発行可能株式総数の記載を指します。

  • 会社の目的は、会社の権利義務の範囲を定めるために必要なことです。
  • 商号は会社の名称で、会社には一つだけの商号が認められます。商人が営業毎の商号が認められる点との違いに注意してください。
  • 会社の本店所在地は、訴えの管轄地となります。会社が被告になる場合、その訴えは本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄になります。
  • 4号は設立の際、出資される財産の価額を例えば「1000万円」と確定させたり、「700万円以上」と最低額を定める事です。この額が集まらないと会社は成立しません。
  • 発行可能株式総数とは、会社が発行できる株式の総数です。
絶対的記載事項の注意すべき点

会社法第27条の5項目→公証人の定款認証時に必ず記載が必要
会社法第37条の発行可能株式総数→会社の成立時までに定款に定めることができる。

以上のように異なっている事です。

これらの絶対的記載事項の記載を欠くと定款が無効となってしまいます。

ところで、会社法第27条1条5項に「発起人の氏名又は名称及び住所」と書かれていますね。
勘のいい方は気付くと思いますが、自然人だけではなく、法人も発起人になることができます。

次に、相対的記載事項と任意的記載事項について。
これらは会社法第29条に規定されています。

会社法第29条

第27条各号及び前条各号に掲げる事項のほか、株式会社の定款には、この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項及びその他の事項でこの法律の規定に違反しないものを記載し、又は記録することができる。

マーカーの前段が相対的記載事項、後段が任意的記載事項について規定しています。

定款の相対的記載事項

定款の相対的記載事項とは、法律の規定に「~定款に別段の定めがある場合を除き~」や「~をするには定款の記載が必要~」と書かれている部分を決める場合に必要な記載です。

定款で記載しておかないと、その事項についての行為は無効となります。(行為が無効となるのであって、定款自体が無効となるわけではない点に注意してください。)

具体的な例では、「株券を発行する旨の規定」「株式の譲渡を制限する旨の規定」などが挙げられます。

定款の任意的記載事項

任意的記載事項は、法律に反しない限り記載の出来る事項です。

具体的な例では、「取締役の人数」「定時株主総会の招集時期」「決算期」などが挙げられます。
定款に記載しなくても、定款外の契約で決めることも出来る内容ですが、定款変更の手続きを考慮し、あえて定款に記載するという意味合いで捉えると良いと思います。中には決意表明を記載する会社もあるようですね。

ちょっと駆け足気味でしたが続いては会社法第28条「変態設立事項」について説明していきます。