募集株式発行の無効
募集株式の発行の瑕疵で、前回の記事に書いたような事後措置(不足分填補責任など)は、会社に対して不足額を填補するので、全体の経済的な公平は保たれますが、株主構成が変化したことによる株主個人の不利益は正されません。
そこで、事後に株式発行の効力を争う方法として、募集株式の発行無効の訴えがあります。(自己株式の処分も同様です)
しかし、通常の無効のようにいつでも誰からでも無効を認めて、すでに取引をした法律関係を遡及させるのは困難です。
そこで会社法は特定の範囲の者から、一定期間に限り、訴えを以ってのみ設立無効を主張できるとしました。
この規定は会社法第828条に規定されています。(今回必要な部分を抜粋します。)
- 次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。
二 株式会社の成立後における株式の発行 株式の発行の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、株式の発行の効力が生じた日から一年以内)
三 自己株式の処分 自己株式の処分の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、自己株式の処分の効力が生じた日から一年以内)
- 次の各号に掲げる行為の無効の訴えは、当該各号に定める者に限り、提起することができる。
募集株式の発行無効の訴えは、株式発行の効力が生じた日から六か月以内(非公開会社は1年以内)に
株主等・・・株主、取締役、監査役、執行役、清算人 のみが訴えを以て主張することが出来ます。
募集株式発行の無効判決が出ると、第三者にも及びますが、その効力は将来に向かってのみ発生します。すでに取引を終えた法律関係には影響を与えません。
これは冒頭で述べたように、すでに発生した法律関係を遡及させるのは難しく、法的安定性を優先させるために整備された規定です。
無効事由
募集株式発行の無効事由として、以下のようなケースが挙げられます。
(1)発行可能株式総数を超える株式の発行
(2)定款に定めのない種類の株式発行
(3)非公開会社で株式総会決議を欠く株式発行
(4)株主への募集事項の通知・公告を欠く株式発行
このようなケースが無効事由と考えられています。
今回説明した、会社法第828条は、「会社設立無効」でも同様の説明しています。
「会社設立無効の訴え」も、「募集株式の発行無効の訴え」も「会社の組織に関する行為の無効の訴え(第828条)」で処理されますので、復習も兼ねて会社設立の無効も読み返してみてください!
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