- 発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、株式会社の設立についてその任務を怠ったときは、当該株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
- 発起人、設立時取締役又は設立時監査役がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
発起人、設立時取締役又は設立時監査役が株式会社又は第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、他の発起人、設立時取締役又は設立時監査役も当該損害を賠償する責任を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。
発起人、設立時役員等は、設立について任務懈怠によって会社に与えた損害を賠償しなければなりません。また職務を行う際に悪意・重過失によって第三者に損害を与えた場合は、その損害の責任を負います。この賠償責任を負うものが複数ある場合は、連帯債務となります。(会社法第54条)
責任の免除
第52条第1項の規定により発起人又は設立時取締役の負う義務、第52条の2第1項の規定により発起人の負う義務、同条第2項の規定により発起人又は設立時取締役の負う義務及び第53条第1項の規定により発起人、設立時取締役又は設立時監査役の負う責任は、総株主の同意がなければ、免除することができない。
会社法第52条1項、第52条の2第1項、2項及び会社法第53条1項の責任は総株主の同意があれば免除することが出来ます。(会社法第55条)
つまり、前回取り上げた、現物出資等に直接かかわった発起人・設立時取締役や仮装の払い込みに関して責任を負う発起人・設立時取締役でも総株主の同意があれば免責とする事が出来ます。
もちろん第53条2項の第三者に対する責任は株主の同意で勝手に免責とするわけにはいきません。(会社法第55条の参照規定に第53条2項は含まれていません。)
会社法第52条第1項の責任を免除する場合
会社法第53条第1項の責任を免除する場合
第52条の2第1項、2項については、平成26年改正で新たに追加された規定ですが、上記と同様の流れで免責となります。
ちょっと複雑ですけれども、条文を照らして取り組んでください。
一応、条文はこのページでも掲載していますが、ご自分の六法を使って紙面で参照した方が流れは掴みやすいと思います。
株式会社不成立の場合の責任
会社の設立において設立登記まで至らなかった場合、会社の不成立となり、すでに履行された払込金、設立費用の負担についての責任問題が発生します。この責任について、会社法第56条では次のように規定しています。
株式会社が成立しなかったときは、発起人は、連帯して、株式会社の設立に関してした行為についてその責任を負い、株式会社の設立に関して支出した費用を負担する。
会社が成立しなかったときの後始末は、発起人が連帯して行う事になります。募集設立の場合は、発起人以外の引受人に対しても出資金の返金処理などの責任を発起人が負う事になります。
ところで発起人とは「定款に発起人として署名した者」と定義されます。
しかし、募集設立においては、募集広告やその他書面等に賛同者として氏名を記載することを承諾すると、定款に署名していなくてもこの「設立に関する責任」で説明する責任を負います。これを「疑似発起人」と言います。
擬似発起人が出てくるのは募集設立ならではの話ですのでお間違えないように。
疑似発起人については会社法第103条4項に規定されています。
- 第57条第一項の募集をした場合において、当該募集の広告その他当該募集に関する書面又は電磁的記録に自己の氏名又は名称及び株式会社の設立を賛助する旨を記載し、又は記録することを承諾した者(発起人を除く。)は、発起人とみなして、前節及び前3項の規定を適用する。
会社法第57条1項の募集とは募集設立のことを指しています。募集設立において、募集広告や書面、ホームページに名前と設立に賛同する旨を記載知る事を承諾したものは発起人と同様の責任を負います。
順番が前後しますが、次に会社法第103条第1項の読み換え規定に注目してみます。
- 第57条第一項の募集をした場合における第52条第二項の規定の適用については、同項中「次に」とあるのは、「第一号に」とする。
募集設立の場合には、会社法第52条第2項の「次に」を「第一号」に読み換えると書いてあるので、会社法第52条を読み換えてみてみましょう。
- 会社法第52条2項(読み替え前)
- 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、発起人(第28条第一号の財産を給付した者又は同条第二号の財産の譲渡人を除く。第二号において同じ。)及び設立時取締役は、現物出資財産等について同項の義務を負わない。
一 第28条第一号又は第二号に掲げる事項について第33条第2項の検査役の調査を経た場合
二 当該発起人又は設立時取締役がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合
- 会社法第52条2項(読み換え後)
- 前項の規定にかかわらず、第一号に掲げる場合には、発起人(第28条第一号の財産を給付した者又は同条第二号の財産の譲渡人を除く。第二号において同じ。)及び設立時取締役は、現物出資財産等について同項の義務を負わない。
一 第28条第一号又は第二号に掲げる事項について第33条第2項の検査役の調査を経た場合
読み替え前が発起設立の場合の規定で、読み換え後が募集設立の場合の規定です。
募集設立の場合は、「職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合」の免責規定が排除され、検査役の調査を経ているときを除き、発起人・設立時取締役の責任が免れなくなり、無過失責任となっています。
募集設立の場合は、設立行為の蚊帳の外にいる引受人の存在を保護する必要があり、このような規定が存在しています。
会社設立の無効
株式会社が設立登記によって成立しても、設立手続きに瑕疵があり、会社設立を認めることが適切ではない場合があります。
しかし、通常の無効のようにいつでも誰からでも無効を認めて、すでに取引をした法律関係を遡及させるのは困難です。
そこで会社法は特定の範囲の者から、一定期間に限り、訴えを以ってのみ設立無効を主張できるとしました。
この規定は会社法第828条に規定されています。(今回必要な部分を抜粋します。)
- 次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。
一 会社の設立 会社の成立の日から二年以内
- 次の各号に掲げる行為の無効の訴えは、当該各号に定める者に限り、提起することができる。
一 前項第一号に掲げる行為 設立する株式会社の株主等(株主、取締役又は清算人(監査役設置会社にあっては株主、取締役、監査役又は清算人、指名委員会等設置会社にあっては株主、取締役、執行役又は清算人)をいう。以下この節において同じ。)又は設立する持分会社の社員等(社員又は清算人をいう。以下この項において同じ。)
設立無効の訴えは、設立から2年以内に株主等だけが提起することができます。
株主等・・・株主、取締役、監査役、執行役、清算人
設立無効の判決が出ると、第三者にも及びますが、その効力は将来に向かってのみ発生します。すでに取引を終えた法律関係には影響を与えません。
設立無効の訴えの原告適格者に会社債権者は含まれていない点に注意してください。
無効判決は、すでに行われた法律効果に影響は与えませんし、債権者に対する会社設立に対する責任は会社法第53条2項の第三者に対する賠償責任の規定で処理するとされています。
無効事由を考えれば設立無効の訴えは株主の為にあることがわかると思います。
無効事由
設立が無効となる例として、
(1)定款の絶対的記載事項が欠けている
(2)設立時株式を一株も引き受けていない発起人がいる
(3)公証人による定款認証が無い
(4)定款で定める出資がなされていない
(5)募集設立での創立総会が適法に開催されていない
などが挙げられます。いずれも株主間の信頼が揺らぐ事由になっています。
設立無効原因は解釈によるものとされているので、ここにあげた例と、原告適格をもっている者は押さえておくとよいと思います。
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