法人契約でも変わらないでしょ?と思っていませんか?法人との建物賃貸借契約

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法人との建物賃貸借契約は、個人との契約とは異なる多くの特性を持っています。本記事では、法人との賃貸借契約における主要なポイントを、契約締結、解約時の注意点、原状回復特約の有効性などに焦点を当てて説明します。

法人契約の規模による違い

小規模法人との契約

個人事業主が法人化し、賃貸物件を社宅扱いにするケースがあります。代表取締役=入居者であるひとり法人の連帯保証人をどうすべきか。この場合は実質的に借主=連帯保証人となってしまいますので、連帯保証人は別世帯の方にお願いするのが一般的です。これは、契約者が法人であっても、実質的には個人と同じようなリスクがあるためです。保証会社を使う場合での緊急連絡先は代表取締役=入居者以外を求められることもあると思います。

大規模法人との契約

大手法人は連帯保証人を設定するケースは少なく、保証会社も使わない契約が多くありますが、毎月同じ日に家賃入金があり安定感はあります。一方、契約時と退去時には事務的な作業が多くなります。一般的なひな形を使って契約させてくれることはまずありません。契約条項の書き換えや特約の追記などを求められます。

しかし貸主側も言われるままに契約書を変えるのではなく、自らも契約案を考えなければなりません。特に退去時に発生する費用を明確に記載することが望ましいです。退去精算についてあいまいな契約をすると、借主法人が解約時の精算時にどんぶり勘定を許さず細かい単価まで求めたり、国交省のガイドラインを盾に交渉を強めてくることもありますので経験の浅い担当者だと対応に苦慮すると思います。退去時に必ず発生するクリーニング費用や修繕費用などをあらかじめ契約書に明記し、交渉の余地を最小限にする工夫が必要です。

原状回復特約の有効性

賃貸借契約には一般的に原状回復特約が含まれますが、個人契約においては、消費者契約法の適用により、通常損耗の費用まで借主に負担させる特約は無効とされています。

法人契約は消費者契約法の適用対象外

法人契約の場合、消費者契約法の適用対象外となるため、契約内容が優先されます。つまり、法人契約での原状回復特約は、公序良俗に反しない限り有効であると考えられます。これは、通常の使用による経年劣化を含む損耗についても、法人契約であれば借主に負担を求めることが可能であることを意味します。例えば汚れの有無にかかわらず退去時にクロスは全部交換するなどの条件でもお互いが合意すれば有効な契約内容となります。

国交省の原状回復ガイドラインの位置づけ

国交省の原状回復ガイドラインは次のように位置づけられています。

民間賃貸住宅の賃貸借契約については、契約自由の原則により、民法、借地借家法等の法令の強行法規に抵触しない限り有効であって、その内容について行政が規制することは適当ではない。本ガイドラインは、近時の裁判例や取引等の実務を考慮のうえ、原状回復の費用負担のあり方等について、トラブルの未然防止の観点からあくまで現時点において妥当と考えられる一般的な基準をガイドラインとしてとりまとめたものである。

原状回復の特約について争われた訴訟については、原告のほとんどが借主である「個人」となっています。そのような裁判例から作られたガイドラインは借主が個人であることを想定していますので、やはり法人契約においては借地借家法等の法令に反しない限り契約自由の原則が優先されます。社宅代行などが発信する原状回復についての情報では、ガイドラインを法律のように扱う傾向がありますが、法人契約の内容に合わせた特約を設定することは可能です。

法人契約の特殊性

法人契約では、契約名義は変えずに、入居者が変わるというタイプがあります。また、法人が従業員である入居者から社宅料として金銭を受け取ると、それが賃貸借契約であると認められ得ることがあり、そうなると転貸借という形になってきますので契約内容はより複雑になります。

法人と従業員間で賃貸借契約が認められると、借地借家法の適用を受け、その従業員が退社した後も退去させることが難しくなります。そうなった場合に、入居者が固定されていないと転貸先がわからないということになります。

人が住むということに関しては、外観上一般の賃貸借契約と変わりませんが、法人契約はこのような特殊性があることも知っておきましょう。

まとめ

法人との賃貸借契約は、個人契約とは異なる多くの要素を含み、特に契約内容の見直しや解約時の精算、原状回復特約の有効性について注意が必要です。小規模法人と大規模法人では契約の扱い方が異なり、それぞれの特性に応じた対応が求められます。