賃貸建物の小修繕の負担者は貸主?入居者?

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賃貸借契約における小修繕の責任分担は、貸主と入居者の間でしばしば問題となります。「小修繕」については、契約書に特約として記載されていることが多いですが、その具体的な範囲や負担義務については誤解が生じやすいです。本記事では、賃貸建物における小修繕の特約について、最高裁判所の判例も交えながら詳しく解説します。

賃貸借契約における小修繕の特約

賃貸借契約には一般的に、「大修繕は貸主が負担し、小修繕は入居者の負担で行う」という特約が含まれています。小修繕の具体例として、電球や蛍光灯、パッキンの交換などが挙げられます。

小修繕の定義と具体例

  • 電球交換: 照明器具の電球や蛍光灯の交換は、一般的に小修繕と見なされます。
  • パッキン交換: 水道や蛇口のパッキン交換も小修繕の一例です。これは、パッキンの劣化による水漏れを防ぐために行われます。
  • 畳表、ふすま、障子の張り替え:これも小修繕とされています。

貸主と入居者の解釈の違い

一般的な賃貸借契約書では「電球替え等の小修繕は入居者の負担ですべきもの」とされており、退去時に電球が切れている場合、その交換費用を入居者に請求するものと解釈されていることが多いです。しかしこれが間違いの場合があるので気を付けてください。

最高裁判所の判例に基づく解釈

最判昭和43年1月25日

「入居後の大小修繕は入居者がする」旨の住居用家屋についての契約条項は、単に貸主が民法第606条第1項所定の修繕義務を負わないとの趣旨にすぎず、入居者が右家屋の使用中に生じる一切の汚損、破損個所を自己の費用で修繕し、右家屋を賃借当初と同一状態で維持すべき義務を負うとの趣旨ではないと解するのが相当である。

https://www.courts.go.jp/

判例の内容

最高裁判所の判例では、小修繕の特約について次のように解釈されています。

  • 貸主が小修繕の義務を負わないという趣旨に過ぎず、
  • 入居者が修繕の義務を負う趣旨ではない

判例の意味するところ

この判例によると、入居者は小修繕を行う義務がないため、具体的には次のように修繕の義務は発生しません。

  • 電球交換: 電球が切れても、入居者が暗い中で生活を続けることができるならば、交換する義務はありません。
  • パッキン交換: パッキンの劣化による水漏れがあっても、入居者が水道料金の増加を我慢できるなら、修繕する必要はありません。

さらに、退去時に電球が切れていたり、パッキンが劣化したままの状態であっても、次の入居者のための交換費用を入居者に請求することはできません。

誰が小修繕を負担するのか?

実際のところ、退去後に次の入居者を迎える際、物件の状態が悪いと新しい入居者を見つけるのが難しくなります。そのため、電球が切れていたり、パッキンが劣化して水漏れが発生している場合には、貸主がこれを修繕することになるでしょう。

まとめ

賃貸建物の小修繕に関する特約は、貸主と入居者の間で誤解が生じやすい項目です。最高裁判所の判例によれば、特約によって貸主が小修繕の義務を負わないことは確かですが、入居者に修繕の義務があるわけではありません。退去精算で電球代を請求されることを経験したことがあるかもしれませんが、このような特約を有効にするためには具体的な特約の内容を定めることが必要です。特約の範囲や内容をお互いに合意したうえで契約を結ぶことが重要になります。