紛争の内容
賃貸物件に関する重要な登記情報の調査を怠った媒介業者が、裁判で損害賠償を命じられた事例があります。この事例は、ラーメン屋を開業するために店舗を借りたXが、媒介業者Yを通じて契約を締結したものの、差押登記が存在することが発覚し、店舗からの退去を余儀なくされたことに端を発しています。
本事例は東京地裁判決平成4年4月16日を引用しています。
事例の経緯
- 契約の成立
- 媒介業者Yは、元付業者Bから入手していた募集広告をもとにXにビルの1階の店舗を紹介し、賃貸借契約を締結させました。
- 契約当日に、元付業者Bが契約に立ち会えないことになり、貸主Aと名乗る男が媒介業者Yに急遽契約書の作成を依頼しました。
- 調査の怠慢
- 媒介業者Yは、元付業者Bが必要な調査を行い、契約書面関係を準備すると思っていたので、店舗の権利関係についての調査を行っていませんでした。
- 後日発覚した事実
- 物件には根抵当権者Cの差押登記、債権者Dの差押登記が存在していたことが判明。
- 貸主Aを名乗っていた男は実は元付業者Bの従業員でした。
- Xの損害
- Xは、店舗の引渡命令を受け、店舗から退去。
- 500万円を投じた内装工事費等の損害を被りました。
当事者の言い分
- 借主Xの主張
- 媒介業者は物件の登記簿を確認し、差押えの有無を調査する義務があるにもかかわらず、それを怠った。
- 媒介業者Yの主張
- 元付業者Bが必要な調査を行うことになっていた。
- 貸主Aと名乗る男の急な依頼に対応するため、登記簿を確認する余裕がなかった。
元付業者Bの関与
元付業者Bは、物件の入居者募集を行い、媒介業者Yに賃貸物件の情報を提供していた業者です。
- 広告資料の提供
- 元付業者Bは、媒介業者Yに対して賃貸物件の広告資料を提供しました。しかし、この資料には物件の差押登記に関する情報が含まれていませんでした。
- 重要事項の調査
- 媒介業者Yは、元付業者Bが必要な調査を行い、重要事項説明書を用意していると信じていましたが、急遽媒介業者Yが調査を行わないまま重要事項説明書を作成することになり、契約してしまいました。
裁判所の判決
裁判所は媒介業者Yに調査義務違反があったとして、損害賠償請求を認めました。その要旨は以下のとおりです。
- 宅建業者の義務
- 宅建業者は、善良なる管理者の注意をもって媒介を行い、賃貸借契約が支障なく履行されるように配慮する義務がある。
- 目的不動産について差押登記がある場合、入居者が損害を被らないように登記簿を閲覧し、確認する義務がある。
- 媒介業者の過失
- 契約当日に元付業者Bの立会いが急遽不能となり、不自然な経過であったにもかかわらず、契約の締結を強行した点。
- 貸主Aと名乗る人物を安易に信用し、契約を先行させたという軽率な点があった点。
まとめ
本事例から、不動産仲介業者が重要事項の調査を怠ることの重大なリスクが浮き彫りとなりました。特に、登記簿の確認や契約者本人の確認など、基本的な調査義務を果たすことの重要性が強調されます。
売買物件に比べて手数料が低くなってしまう賃貸借の媒介は件数を増やし回転を上げることを優先し、客付側の不動産業者は物件の調査情報を元付業者に頼りがちです。
不動産取引では「元付」「客付」と一つの取引に複数の業者が介在することがありますが、重要事項説明書に押印するということはそれぞれの業者が独自に調査する必要があります。
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