増築未登記物件の売買における重要事項説明のポイント
不動産売買において、増築未登記部分が存在する場合、その取り扱いには特別な注意が必要です。今回は、増築未登記部分がある不動産の売買における重要事項説明方法と取引上の留意点について解説します。
重要事項説明書の記載方法
重要事項説明書には、登記事項証明書に記載された公簿面積と、未登記部分の内容を明確に記載します。
未登記の内容の記載:増築未登記部分について、建物の表示欄には登記事項証明書の公簿面積を記載し、備考欄に未登記部分の位置・面積・部屋の形状、増築時期などを記載します。
記載例:「上記記載の公簿の床面積のほか、増築未登記部分(1階東南側洋室部分)が約15㎡あります。増築時期平成○年〇月。建築確認通知書による。」
建蔽率・容積率オーバーの記載:増築によって建蔽率、容積率を超過している場合、その旨を記載し、行政から是正命令等を受ける可能性についても説明します。
記載例:「対象建物の建築面積及び延べ面積はそれぞれ建蔽率、容積率の指定制限を超過しており、監督官庁より是正命令等を受ける可能性があります。また、建替える際は、現況の建物と同規模の建物は建てられません。」
売買契約書における特約の必要性
未登記部分の建物については、売主が所有者であるかどうか特定できないため、所有権の確実性を確保するために、売主が建物表題変更登記を行う特約を設けることが一般的です。
記載例:「売主は、令和○年〇月〇日までに、売主の責任と負担において、本物件建物の未登記部分の表題変更登記を完了するものとする。」
金融機関による融資の際にも、未登記部分が抵当権の対象になるようにするため、表題変更登記が求められることが多いです。また、違法建築物については融資をしない金融機関もあるため、事前に確認が必要です。
また、建物について取り壊し前提であっても、未登記部分の所有権を売主に明確にしてもらう旨の覚書や特約を付けておくことが必要です。
不動産広告の表示方法
不動産広告を行う際には、建物の面積欄に実際の面積を記載し、備考欄に未登記部分があることやその詳細を表示します。
記載例:「建物面積には、増築未登記部分(1階東南側・洋室部分)約15㎡を含みます。対象建物の建築面積及び延べ面積はそれぞれ建蔽率、容積率の指定制限を超過しており、監督官庁より是正命令等を受ける可能性があります。また、建替える際は、現況の建物と同規模の建物は建てられません。増築時期・平成○年〇月。」
見逃してしまいがちな違反増築
建蔽率に算入されるカーポート
カーポートは建蔽率に算入されますが、建物設計時にカーポートまで計算していることは稀でしょう。建売住宅でカーポート付きのものを見ることはあまりありません、そのため、カーポートは新築時に設置せずに引き渡しを受けてから設置するケースが多いのではないでしょうか。
カーポートは登記義務はありませんし、固定資産税の対象になりませんので、違反がおとがめを受けることは少ないのではないかと思います。
サンルーム
ベランダや、ウッドデッキ部分をサンルームに改装した場合は、建蔽率・容積率に影響しますので、違反建築になる場合があります。また登記義務があり、固定資産税の対象になります。
不動産の広告で目にする違反建築では、その原因がサンルームであるケースは多いです。
まとめ
増築未登記部分がある不動産の売買では、重要事項説明書に増築部分の詳細を記載し、建蔽率・容積率オーバーの説明を行うことが重要です。売買契約書には、表題変更登記を行う特約を設け、広告には未登記部分の情報を明記します。
この記事では、増築未登記部分がある不動産の売買における重要事項説明の方法と取引上の留意点について解説しました。適切な手続きを行い、トラブルを防止するためのポイントを理解し、安全な取引を進めましょう。