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株式譲渡と権利行使

株券発行会社の株式の譲渡

会社法第128条(株券発行会社の株式の譲渡)
  1. 株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。ただし、自己株式の処分による株式の譲渡については、この限りでない。
  2. 株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない。

株券発行前の譲渡は、会社に対しては効力を生じませんが当事者間では意思表示のみで有効に成立します。(会社法第128条2項)
一方、株券発行会社では、株券を交付しなければ譲渡が成立しません。当事者間でも譲渡が成立しません。(会社法第128条1項)

株券発行が不当に遅れた場合は、株券発行前の取引だとしても会社に対して譲渡の効力が生じるという判例がありますので、注意してください。

株式会社が株券の発行を不当に遅滞し、信義則に照らして、株式譲渡の効力を否定するのを相当としない状況に至つたときは、株券発行前であつても、株主は、意思表示のみにより、会社に対する関係においても有効に株式を譲渡することができる。

最大判昭和47年11月08日

第三者に対する対抗要件

株券発行会社であっても意思表示のみで取引が成立するケースがあると、株券発行会社においても二重譲渡の危険があります。

株券発行会社以外の第三者に対しては、株券の交付が対抗要件となります。
会社に対する対抗要件ではありません。

では株券発行会社に対する対抗要件はどのようなものになるでしょうか。

株券発行会社に対する対抗要件

会社に対する株式の対抗要件は会社法第130条に規定されています。

会社法第130条(一部読み換え)(株式の譲渡の対抗要件)

株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社に対抗することができない。
※原文の「株式会社その他の第三者」を「株式会社」と読み換えています。

会社に対して譲渡を主張するには、株主名簿の名義書き換えをする必要があります。

株券を持っていれば、譲受人が単独で名義書き換えを請求できます。原則は元の株主と共同で名義書き換えの請求をしなければなりませんが、法務省令の定めにより株券を提出することで単独で名義の書き換え請求が出来るようになっています。

株券を発行しない会社の株式譲渡

株券を発行しない会社の株式は、当事者の意思表示のみで譲渡が成立します。

しかし、株式は目に見えない権利の概念ですから、株式会社や第三者に譲渡を主張するには株主名簿に記載してもらう必要があります。
株式が二重譲渡や差し押さえられた時、株主名簿に記載が無ければ対抗できない事になります。

この図の場合、株式会社はAを株主と扱います。

株券を発行しない会社では、株主名簿の名義書き換えが株式会社と第三者への対抗要件となります。

会社法第130条(株式の譲渡の対抗要件)

株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない。

株券を発行しない会社で、株式の譲受人が株主名簿の名義書き換えをするには、元の株主と共同で請求しなければなりません。
これは虚偽の名義変更を防ぐためです。

株券発行会社、株券不発行会社ともに会社への対抗要件は株主名簿への名義書き換えですが、

株式譲受人から株式会社に対し株式名義の書換の請求をした場合において、会社の過失により書換が行なわれなかつたときは、会社は、株式名義の書換のないことを理由として、株式の譲渡を否認することができない。(最判昭和41年07月28日)

この判例では、過失により名義書き換えに応じない会社は、株式の譲渡を否認できない。としています。