原野商法に宅建業法は適用されるのか

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原野商法の被害

事案の概要

平成27年7月27日、個人である原告Xは、宅建業者Aから自宅を訪問され、山林の売買を持ち掛けられ、原野販売業者との取引が不調になった場合に備えて保険を契約するよう勧められました。

翌日、Xは自宅近くの喫茶店でAと会い、栃木県の山林の売買契約書に署名・押印しましたが、それが土地の売買契約書であるとの詳しい説明は受けていませんでした。その後、XはAに90万円を支払い、所有権移転登記がなされました。その後、Xの娘が契約書を発見し、本件被害が発覚しました。

原野商法とは?

「原野商法」とは、値上がりの見込みがほとんどないような山林や原野について、実際には建設計画等はないにもかかわらず「開発計画がある」「もうすぐ道路ができる」などとうその説明をしたり、「将来確実に値上がりする」などと山林を販売する勧誘を行ったりして販売をする商法です。

その他、すでに原野商法で山林を買った人に対して、「土地を買わせてくれ」などと言って近づき、さらに山林を買わせたり、売買準備と称して高額な測量費用などを請求したりする二次被害も出ています。

訴訟と裁判の経過

平成28年2月、Xは宅地建物取引業保証協会(被告Y)に対して、Aとの取引により生じた債権額90万円の弁済を求めましたが、宅建業法上の宅地に該当しないとして認証が拒否されました。Xは訴訟を提起し、詐欺を理由に契約の取消しを主張しましたが、Aは出廷せず、請求が認容されました。

判決の要旨

裁判所は、本件土地が宅建業法上の「宅地」に該当するかを検討しましたが、以下の点から該当しないと判断しました。

  1. 本件土地は山林であり、現に建物の敷地に供されていない。
  2. 本件土地の隣地も建物の敷地に供されていない。
  3. 本件土地は袋地であり、建築基準法に基づき建物を建築できない。
  4. 本件土地は上下水道、電気、ガス等のインフラが整備されていない。

また、X自身も本件契約が土地の売買契約であることを認識しておらず、Aも土地を建物の敷地に供する前提で勧誘していなかったことから、主観的目的においても宅地に該当しないとされました。

判決の結論

以上の理由から、本件土地は宅建業法2条1号に定める「宅地」に該当せず、宅地建物取引業に関する取引とは認められないため、Xは保証協会に対して認証を請求することはできないとされました。

保証協会の役割と限界

宅地建物取引業保証協会は、宅建業者の業務に関する弁済業務保証金制度を運営し、宅建業者が顧客に対して負うべき債務を保証する役割を果たしています。しかし、保証の対象となる取引は宅地建物取引業法に基づく「宅地」に限られます。本件では、取引対象の土地が「宅地」と認められなかったため、保証協会は弁済を拒否しました。

まとめ

本件判決は、原野商法における取引が宅建業法に基づく宅地取引に該当するか否かを検討し、該当しないと判断しました。これは実務においても参考になる重要な判例です。

客観的に建物の敷地に供することが予定されていない土地の取引、例えば都市計画法の用途地域外の山林や農地の取引においては宅地建物取引業法の規制を受けません。その為、媒介報酬の規制もありませんし、宅建業免許も必要ありません。そのため、それらの売買にはさらに慎重に事を進める必要があります。