マンション建替えの売渡請求権の強制力

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建替え決議と売渡請求

建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第62条に基づく建替え決議と、区分所有法第63条の売渡請求権は、全ての区分所有者にとって強い強制力を持ち、大きな影響を与えます。この法律に基づき、マンションの建替えが決定されると、反対する所有者にも参加の意思表示が求められます。

区分所有法第63条の概要

区分所有法第62条による建替え決議があったときは、建替え決議に賛成しなかった区分所有者に対し、建替えに参加するか否かを回答すべき旨を催告しなければなりません。これは書面のほか、電子メールなどで行うことも可能です。

建替え決議に賛成しなかった区分所有者は、催告が届いてから2か月以内に回答をしなければなりません。回答しなかった場合は、建替えに参加しないとみなされます。

建替え参加者は、建替えに参加しない区分所有者に対して区分所有権・敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求(売渡請求権)することができます。これは催告回答締め切りから、さらに2か月の間で行われます。

建替えに参加しない区分所有者が、困窮するおそれがあり、かつ、建替えの遂行に大きな影響を及ぼさないものと認められる場合は、裁判所の許可によって、代金の決済日から1年を超えない範囲内で、建物の明渡しを先延ばしすることができます。

建替え決議の日から2年以内に建物の取壊しの工事に着手しない場合には、区分所有権・敷地利用権を売り渡した建て替えに参加しない者は、さらに6か月月以内に、その区分所有権・敷地利用権を買い戻す請求をすることができます。

概ねこのような法律の立て付けになっています。

区分所有法第63条の売渡請求権の強制力

建替え決議に賛成した区分所有者から、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者に対して、区分所有法第63条第4項に基づく売渡請求が行われた場合、建替えに参加しない区分所有者はこれを拒むことが出来ません。この売渡請求権は形成権とされており、売渡請求権行使の意思表示が相手方に到達すると直ちに、相手方の区分所有権及び敷地利用権を目的とする時価による売買契約が成立するとされています。さらに平成16年7月13日の東京地裁判決では、建替えに参加しない区分所有者が賃貸借契約によってその建物を貸していた場合にも、借家人を退去させ、建物を引き渡す義務があると明示されました。

形成権

形成権とは、権利者の一方的な意思表示によって一定の法律関係を発生させたり、消滅させたりする権利を言います。区分所有法第63条による売渡請求権は、一般的な売買契約のように双方の合意で締結されるものではなく、売渡請求権の行使するという通知で売買契約が成立してしまうというかなり強い権利となります。

東京地裁平成16年7月13日判決の事案について

この判例では、マンションの管理組合の理事長が、建替え決議に賛成しない区分所有者に対し、区分所有法第63条に基づく回答を求め、その後、売渡請求を行いました。回答がなかったため、売渡請求に基づき、区分所有建物の所有権移転登記手続き、区分所有建物の借家人退去、敷地利用権の譲渡を求めました。

裁判所は、売渡請求権行使により、借家人を退去させる義務が発生するとし、区分所有者が負う義務の具体的な範囲が明らかになった重要な判決となります。