地域地区による制限②

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地域地区の制限について知っておこう

こんにちは!今回も引き続き、地域地区に関する様々な制限についてお話しします。これらの制限は、都市計画の重要な部分であり、土地利用や建築行為に大きな影響を与えます。それでは、具体的な例も交えながら、各地区の特性と制限について見ていきましょう。

1. 防火地域、準防火地域

防火地域と準防火地域は、市街地における火災の危険を防ぐために定められる地域です。これらの地域内では、建築物には特定の防火設備や延焼を防止する性能を有することが求められます。

また、東京都では災害時の危険性が高い地域について、建築物の耐火性能を強化する、新たな防火規制区域という知事が指定する区域があります。

2. 特定防災街区整備地区

特定防災街区整備地区は、「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」に基づき定められます。密集市街地における防災対策を強化するために、特定防災機能の確保並びに土地の合理的かつ健全な利用を図ることを目的としています。

東京には、都心や副都心等の商業・業務地域を除けば、老朽木造建築物の密度が高く、道路・公園等の公共空間が乏しい木造住宅密集地域が広範に存在している。

このような木造住宅密集地域では、震災時の老朽建築物の倒壊や大規模な市街地火災等から、人々の生命と暮らしを守るため、防災都市づくりの推進に努め、災害に強いまちづくりを行っていくことが重要である。

具体的には、都は、市街地火災の延焼を阻止する機能を確保するための延焼遮断帯の形成や、建築物等の不燃化や共同化の促進による安全で良質な市街地の形成、円滑な消火・救援や避難に必要な機能を確保するための道路・公園等の整備、 無電柱化による閉塞防止など、防災都市づくりの取組を進めていく必要がある。

また、防災都市づくりの取組は、首都直下地震への備えに併せ、「未来の東京」 戦略で示す方向性や、都市づくりのグランドデザインで示す2040年代の都市像や将来像の実現に向け、人口減少、超高齢化の進行に加え、新たな感染症の脅威など、様々な課題を解決しながら展開する都市づくりに寄与していく必要がある。

防災街区整備方針は、このような防災都市づくりの推進に向け、防災上危険性の高い木造住宅密集地域について、計画的な再開発又は開発整備により、延焼防止機能及び避難機能の確保と土地の合理的かつ健全な利用が図られる防災街区の 整備を促進し、安全で安心して住め、かつ魅力的な街並みの住宅市街地への再生を図るために策定するものである。

東京都都市整備局|防災街区整備方針

3. 居住環境向上用途誘導地区

居住環境向上用途誘導地区は、都市再生特別措置法に基づき、立地適正化計画に記載された居住誘導区域のうち、居住環境向上施設を有する建築物の建築を誘導する必要があると認められる区域とされています。

居住環境向上用途誘導地区は、居住誘導区域内において、居住環境向上施設に限定して用途規制や容積率の緩和を行う一方、それ以外の建築物については、従前どおりの規制を適用することにより、居住環境向上施設を有する建築物の建築を誘導することを目的としています。

居住環境向上施設として、地域住民を対象にした比較的小規模な病院等の医療施設、日用品を扱う比較的小規模な店舗、専ら近隣に居住する者の利用に供するコワーキング施設等が考えられる。

4. 景観地区

景観地区は、形態意匠の制限の他、建築物の最高限度、敷地面積の最低限度等について、市区町村が都市計画として決定します。

景観地区内で建築等を行うためには、形態意匠の制限に適合することについて、市町村長の認定を受けることが必要となります。認定制度は、一義的・定量的に定めることが難しい建築物等のデザインについて、都市計画で裁量的・定性的な基準を定め、市町村が個別の建築等の計画に対して都市計画との適合性を裁量的に判断する仕組みです。
形態意匠の制限以外の項目についても、建築確認の対象となります。

具体例:鎌倉市

全般:建築物の外観、形態意匠は市街地を取り囲む歴史的風土や自然環境 周辺の街並みと調和し、かつ均整の取れたものとすること。

建物の色彩:建築物の屋根及び外壁の基調色は、後背の山並みや歴史的資源と調和し 隣接する建築物との対比感が強い 歴史的資源と調和し、隣接する建築物との対比感が強い色彩は避けるものとし、かつ以下の基準に適合したものとする。ただし、素材色などでまちなみに違和感を与えないと認められるものについてはこの限りではない。

屋根の基調色:

色相明度彩度
0YR~5Y6以下4以下
上記以外6以下1以下

外壁の基調色:

色相彩度
0YR~5Y6以下
上記以外2以下

5. 風致地区

都市の風致(樹林地、水辺地などで構成された良好な自然的景観)を維持するため、都市において良好な自然的景観を形成している区域のうち、土地利用計画上、都市環境の保全を図るため風致の維持が必要な区域を指定するものです。

  • 制限:建築物の建築、宅地の造成、木竹の伐採などが地方公共団体の条例により規制されます。

6. 緑地保全地域、特別緑地保全地区、緑化地域

これらの地域は、「都市緑地法」に基づき、都市の緑地を保全するために定められます。

緑地保全地域里地・里山など都市近郊の比較的大規模な緑地において、比較的緩やかな行為の規制により、一定の土地利用との調和を図りながら保全する制度です。
特別緑地保全地区都市における良好な自然的環境となる緑地において、建築行為など一定の行為の制限などにより現状凍結的に保全する制度です。
緑化地域緑が不足している市街地などにおいて、一定規模以上の建築物の新築や増築を行う場合に、敷地面積の一定割合以上の緑化を義務づける制度です。

7. 生産緑地地区

市街化区域内の農地で、良好な生活環境の確保に効用があり、公共施設等の敷地として適している500㎡以上の農地を都市計画に定め、建築行為等を許可制により規制し、都市農地の計画的な保全を図ることを目的とした地区です。

生産緑地は、都市計画決定から30年が経過する日以後、所有者が、自治体に対し、いつでも買取りの申出をすることができるようになっていましたが、平成29年に生産緑地法を改正し、買取りの申出が可能となる期日を10年延期する制度を創設しました。これに該当する生産緑地は特別生産緑地と指定されています。

8. 歴史的風土特別保存地区、第1種・第2種歴史的風土保存地区

これらの地区は、「古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法」に基づき、歴史的風土を保存するために定められます。

「古都」とは、わが国往時の政治、文化の中心等として歴史上重要な地位を有する市町村をいい、古都保存法でその市町村を定めています。 現在、京都市、奈良市、鎌倉市のほかに、天理市、橿原市、桜井市、奈良県生駒郡斑鳩町、同県高市郡明日香村、逗子市並びに大津市の合計8市1町1村が「古都」に指定されています。

「歴史的風土」とは、古都保存法において「わが国の歴史上意義を有する建造物、遺跡等が周囲の自然的環境と一体をなして古都における伝統と文化を具現し、及び形成している土地の状況」と定められており、歴史的な建造物や遺跡と、それらをとりまく樹林地などの自然的環境が一体となって古都らしさを醸し出している土地の状況をいいます。

歴史的風土保存区域内では、次のような行為を行う場合、あらかじめ知事(政令市においては市長)への届出が必要となります。

  1. 建築物その他の工作物の新築、改築又は増築 
  2. 宅地の造成、土地の開墾その他の土地の形質の変更
  3. 木竹の伐採 
  4. 土石類の採取 
  5. 水面の埋め立て又は干拓 
  6. 屋外における土石、廃棄物、再生資源の堆積

9. 伝統的建造物群保存地区

伝統的建造物群保存地区は、「文化財保護法」に基づき、都市計画区域及び準都市計画区域内で指定されます。

城下町、宿場町、門前町など歴史的な集落・町並みの保存を図るため、自治体が伝統的建造物群保存地区を決定し、地区内の保存事業を計画的に進めるため、保存条例に基づき保存活用計画を定めます。

10. 駐車場整備地区

駐車場整備地区は、交通が混雑する地域で駐車施設を確保し、道路交通の円滑化を図るために定められます。

  • 駐車場の附置義務:延べ面積が2,000㎡以上の建築物には、床面積に応じて一定の駐車場を確保することが義務付けられます。

東京都駐車場条例

東京都では以下のような駐車場条例が上乗せ規制されています。

特定用途
用途対象建築物の規模駐車台数の算定
百貨店 その他の店舗1,500平方メートル250平方メートルごとに1台
その他1,500平方メートル300平方メートルごとに1台
・駐車場整備地区・商業地域・近隣商業地域
非特定用途
用途対象建築物の規模駐車台数の算定
共同住宅2,000平方メートル350平方メートルごとに1台
その他2,000平方メートル300平方メートルごとに1台
・駐車場整備地区・商業地域・近隣商業地域

11. 臨港地区

臨港地区は、「港湾法」に基づき、港湾施設の利用を促進するために定められます。

港は重要な物流拠点であり、各ふ頭は港湾計画に基づいて整備され、倉庫や流通センターなどが立地し、活発な事業活動が行われています。

例えば東京港の臨港地区は都市計画法上の「臨港地区」であり、港湾計画による物流サービス等のための土地利用計画を確保し、その地区に適した事業所の立地や事業活動の実現を目的として、都知事が国土交通大臣の同意を得て指定しています。

東京港の臨港地区では、取り扱う貨物等の種類に応じて、目的別に7つの分区を定め、各分区の目的に応じて構築物を規制しています。

分区目的
商港区旅客又は一般の貨物を取り扱わせることを目的とする区域
特殊物資港区石炭、鉱石その他大量ばら積を通例とする貨物又は鉄鋼など、大量かつ単一の貨物を取り扱わせることを目的とする区域
工業港区工場その他工業用施設を設置させることを目的とする区域
漁港区水産物を取り扱わせ、又は漁船の出漁の準備を行わせることを目的とする区域
保安港区石油類等の危険物を取り扱わせることを目的とする区域
マリーナ港区スポーツ又はレクリエーションの用に供するヨット等の利便に供することを目的とする区域
修景厚生港区港の景観を整備するとともに、港湾関係者の厚生の増進を図ることを目的とする区域

12. 流通業務地区

流通業務地区は、「流通業務市街地の整備に関する法律」に基づき、物流業務施設の整備を促進するために定められます。

相当数の流通業務施設が都市内において無秩序に立地した場合、交通渋滞の一因となり、流通機能の低下を招く一因となることがあります。

都市における流通機能の向上及び道路交通の円滑化を図るために、市街地の外周の地域において、流通業務施設を可能な限り集約的に整備していくことが必要であるため、流通業務地区に指定されると一定の行為が制限されます。

13. 航空機騒音障害防止地区・同防止特別地区

これらの地区は、特定空港(例:成田国際空港)の周辺において、航空機騒音の影響を軽減するために定められます。

航空機騒音障害防止地区航空機騒音障害防止特別地区
地区の設定基準時間帯補正等価騒音レベル(Lden)が62dB以上の地域Ldenが66dB以上の地域
規制内容学校、病院、住宅、保育所、その他福祉施設などを建築する場合は、防音上有効な構造としなければならない。左記の施設を新たに建築することは原則不可
防音上有効な措置・防音上有害な隙間が生じないこと。
・直接外気に接する窓及び出入り口にあっては、ガラスの厚さを5ミリメートル以上にする。またはこれと防音上同等以上の効果のあるもの。
・外気に接する給排気口にあっては、開閉措置を設けること。
次の建築物については、上記規制を受けません。
例)店舗、事務所、ガソリンスタンド、工場、倉庫、レジャー施設等(いずれも併用住宅は除きます。)

まとめ

地域地区に関する制限は、多岐にわたる規制を含んでいます。これらの制限を理解し、適切に対応することで、計画的な土地利用と都市開発を進めることができます。ご不明点がある場合は、専門家に相談することをお勧めします。