株主総会の議題は株主総会招集権限のある者(主に取締役)に委ねられていることになっていますが、株主も株主総会の議題を提案することができます。
株主提案権は、会社法第303条から第305条までに規定がありますが、流れが掴めればOKだと思います。株主総会招集手続きの付属知識として捉えるとよいのではないでしょうか。
- 株主は、取締役に対し、一定の事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。次項において同じ。)を株主総会の目的とすることを請求することができる。
- 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、総株主の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権又は三百個(これを下回る数を定款で定めた場合にあっては、その個数)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主に限り、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。この場合において、その請求は、株主総会の日の八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までにしなければならない。
- 公開会社でない取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
- 第2項の一定の事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項の総株主の議決権の数に算入しない。
この第303条では、議決権を行使できる株主なら株主総会の議題を提案できる(1項)ことを原則としていますが、2項以降を読んでいくと、この原則が適用されるのは非取締役会設置会社だけです。
しかし、旧商法時代に設立された株式会社では、中小企業も含めて、ほとんどの会社で取締役会を設置しています。
2項は「前項の規定にかかわらず」と例外規定の形を取っていますが、こちらがほとんどの会社に適用されます。
取締役会設置会社では、総株主の議決権の1/100以上の議決権又は300個以上を6か月前から引き続き持っている株主に限り、株主総会の議題を提案できます。(2項)
「6か月前から引き続き」という要件は、非公開会社では適用されません(3項)これはもうお約束ですので、非公開会社は6か月適用なしと覚えておいてくださいね!
※非公開会社(譲渡制限会社)では株主の変動がほとんどありませんから、「6か月前」という縛りはあまり意味が無いんです。
株主は、株主総会において、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。次条第1項において同じ。)につき議案を提出することができる。ただし、当該議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき株主総会において総株主(当該議案について議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合は、この限りでない。
取締役会設置会社、非設置会社を問わず、議決権をもつ株主は、株主総会の議題に対する、議案を提出することが出来ます。
第303条では「議題」の提案権でしたが、この第304条は「議案」の提案権です。ちょっとややこしいですね。
例えば、株主総会で「取締役を選任する」という議題に対して、「Aを取締役に選任する」という議案を提出するということです。
ただし過去3年以内に、議決権の1/10以上の賛成を得られなかった議案と同様の議案は提出することは出来ません。
- 株主は、取締役に対し、株主総会の日の八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、株主総会の目的である事項につき当該株主が提出しようとする議案の要領を株主に通知すること(第299条第2項又は第3項の通知をする場合にあっては、その通知に記載し、又は記録すること)を請求することができる。ただし、取締役会設置会社においては、総株主の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権又は三百個(これを下回る数を定款で定めた場合にあっては、その個数)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主に限り、当該請求をすることができる。
- 公開会社でない取締役会設置会社における前項ただし書の規定の適用については、同項ただし書中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
- 第1項の株主総会の目的である事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項ただし書の総株主の議決権の数に算入しない。
- 前三項の規定は、第1項の議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき株主総会において総株主(当該議案について議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合には、適用しない。
株主は株主総会で提出する議案を通知するよう、取締役に対し請求できますが、会社法第303条と同じく取締役会設置会社では議決権の保有要件があります。
第304条に規定されているように、議決権を持つ株主なら議案を提出できますが、その議案を事前に周知させるには一定の株式を保有していなければならないのです。その要件は総株主の議決権の1/100以上の議決権又は300個以上を6か月前から引き続き持っているという事であり、その株主に限り、株主総会で提出する議案を通知するように請求できます。
小さい会社であれば、その場の議案周知でも何とかなるかもしれませんが、株主多数の大きな会社では、事前に議案を通知しなければ、票がまとまることは期待できません。
票がまとまらず1/10以上の賛成がなかったら、3年間は同じような議案は提出できないのですから、有効な議案を提出するためには一定の株式保有は不可欠になると思います。
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