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協議離婚の後、子供の奪い合いが問題になることがあります。離婚前の別居状態でも起こり得ることですが、そのような場合に子供の引き渡しを求める法的手段について解説していきます。

子の引渡請求

家事審判手続きによる引渡請求

離婚後に、親権者でない父母の一方が子供を連れ去ってしまったというような場合は、子供を取り戻すために家庭裁判所に調停又は審判の申立てをすることができます。また離婚前は父母双方が親権を持っていますが、すでに別居している夫婦が子供の引渡しについての話合いがまとまらない場合や、話し合いができない場合にもこの申立を利用することができます。この場合は、子の監護者の指定の申立てを同時にする必要があります。

話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され、裁判官が一切の事情を考慮して審判をすることになります。

子の監護者の指定調停または審判の申立て

子供の監護者を決めるときの協議が調わないときは家庭裁判所の調停又は審判の手続を利用することができます。調停手続を利用する場合は子の監護者の指定調停事件として申し立てます。

話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され、裁判官が一切の事情を考慮して審判をすることになります。


子の引渡しや、監護者の指定は、子供の環境にとって重要なことであるので十分に配慮する必要があります。調停の場合には裁判所から選任される調停員が入って話合いでの合意形成を目指します。

引き渡し請求については、子供に差し迫った危険がある場合など、調停・審判による紛争の解決を図ることが困難になる場合には審判の申立てのほかに保全処分の申立てをすることにより、家庭裁判所は、審判を待たずに子供を引き渡すように命ずる保全処分についての判断をすることができます。

民事訴訟手続きによる子の引渡請求

民事訴訟によっても子供の引渡請求は出来ます。民事訴訟による子の引渡の請求は、親権者ではない者から、子に対する親権行使の妨害排除を求める訴訟であるとしています。しかしながら最高裁決定の補足意見では以下のように述べています。

家庭裁判所による子の引渡請求について

「家庭裁判所調査官が関与し、子の意思の把握に大きな役割を果たしている。更に、子に意思能力があれば、裁判所は職権で子を利害関係人として手続に参加させることができ、子の手続代理人として弁護士を選任するなどして子の意思を手続に反映させることも可能である」

民事訴訟による子の引渡請求について

「民事訴訟の手続による親権に基づく子の引渡請求の本案訴訟及びそれを本案とする民事保全処分においては、権利の存否及び保全の必要性について、専ら、当事者(本件でいえば、子の父と母)が裁判所に対して主張と証拠の提出を行わなければならず、裁判所が子の利益のために後見的役割を果たすことは予定されておらず、そのための道具立ては用意されていない。」

以上のように子の引渡し請求として、民事訴訟による親権行使の妨害排除請求について消極的であるように見られます。

人身保護法による子の引渡請求

人身保護法の目的は、「この法律は、基本的人権を保障する日本国憲法の精神に従い、国民をして、現に、不当に奪われている人身の自由を、司法裁判により、迅速、且つ、容易に回復せしめることを目的とする。」としており、人身保護法による請求には、連れ去られた子どもの引渡請求も挙げられます。

請求手続きは原則的に弁護士を代理人としなければなりません。これは手続きの迅速性をも目的とする趣旨の表れと思われます。

この法律により救済を受けられる者の要件は次の通りです。

①法律上正当な手続によらない

②身体の自由を拘束されている者

①②を満たす必要がありますが、別居している夫婦では両方が親権を持っているため、①について厳格に判断されます。この問題を扱った最高裁判決では次のように述べています。

「夫婦の一方が他方に対し、人身保護法に基づき、共同親権に服する幼児の引渡しを請求する場合において、幼児に対する他方の配偶者の監護につき拘束の違法性が顕著であるというためには、右監護が、一方の配偶者の監護に比べて、子の幸福に反することが明白であることを要する。」

また人身保護法による救済は、「非常応急的な特別の救済方法である」ため、原則的には子の監護をめぐる紛争の処理は科学的な調査機構を有する家庭裁判所の審判手続により行うことが望ましいという補足意見があります。

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