親族間の不動産売買における留意点 〜低額譲渡と贈与税の注意点〜
不動産の親族間売買は、特有の問題や注意点が多く存在します。特に、売買価格が市場価格と異なる場合や税務上のリスクなどを考慮する必要があります。今回は、親族間での不動産売買において注意すべきポイントや法的な注意点を解説します。
親族間売買の留意点
親族間で不動産を売買する際には、一般的な売買とは異なる点がいくつかあります。主な留意点を以下に示します。
売買価格の設定
相続税評価額を基準に考える
親族間での不動産売買では、売買価格が市場価格に比べて低く設定されることが少なくありません。しかし、税務上「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合」、その差額が贈与とみなされ、贈与税が課税されることがあります。一般的に、売買価格が時価の80%未満である場合は「著しく低い価額」とされることが多いようです。
時価とは何か?
税法では「時価」の明確な定義はありませんが、財産評価基本通達によれば、市街地においては路線価によって評価することが基本です。また、判例では、時価を「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に、財産の現況、取引価額の決まり方等を勘案して、社会通念に従い、通常成立すると認められる価額」としています。
路線価と市場価格には大きな差があります。東京都23区では路線価と市場価格が倍以上離れていることはよくあります。税法と判例でいう「時価」の捉え方が異なりますので、何のために使う指標かをよく考慮する必要があります。
親族間売買では居住用財産の特例控除が使えない
孫娘の配偶者への適用
居住用財産を売買したときには特例控除(3,000万円)がありますが、売買の相手方が「政令で定める特別の関係がある者」には適用されません。これには配偶者や直系血族が含まれます。
政令で定める特別の関係がある者の例
- 妻と子
- 生計を一にしている親族
- 家屋の譲渡がされた後に当該家屋に居住をする親族
- 事実婚の相手と、その者の子
親族間売買では住宅ローンが使えない
親族間での不動産売買では、住宅ローンの利用が困難です。
通常、親族から不動産を譲渡する場合、売買ではなく相続や贈与という形になるのが一般的です。しかしあえて売買という形をとるということは新たな金銭の需要が発生します。
金銭を発生させなくても良い状況で、金銭を発生させるということは、純粋に不動産を買うための資金ではなく、別の理由で金銭を得たいという理由があるのではないかと勘繰るわけです。例えば事業資金の需要などです。
そういう理由もあり、金融機関は親族間売買への住宅ローンの貸し出しを拒むのです。
しかし、状況や物件によっては融資が可能な金融機関も存在します。ノンバンクや信金のプロパーローンは付き合いがあるところでは対応してくれる可能性はあります。
金融機関としては、物件内容や売買契約書を厳しく審査するため、住宅ローンを利用する場合は個人売買ではなく、媒介業者を介在させる方が良いでしょう。
まとめ
親族間での不動産売買は、売買価格の設定や税務上の問題、住宅ローンの利用など、いくつかの注意点を理解し、慎重に進める必要があります。以下にまとめます。
- 売買価格は、相続税評価額を基準に設定し、時価の80%以上を目安にする。
- 居住用財産の特例控除は、親族間売買で適用されない場合があるので注意する。
- 住宅ローンは、かなり難しいと考えるべき。金利度外視ならば選択肢は残っている。
親族間売買では、第三者を介した適切な契約手続きと、税務上のリスク回避が重要です。必要に応じて専門家に相談しましょう。