低廉な空家等の売買取引における媒介報酬額の特例

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郊外の既存住宅の流通市場の問題

背景と課題

近年、既存住宅の流通市場の活性化が喫緊の課題となっています。特に、空家の流通が注目されており、その取引価格は低額帯が多い傾向にあります。しかし、空家の取引においては、媒介業者の受け取る報酬額が現地調査等の経費を含んでいるため、実質的な収益が低く、業務効率が低下することが懸念されています。

売却依頼があっても空家は老朽化している物件や、依頼物件が遠方にあったりするなど、通常の売却に比べ、調査等に要する経費がかかり規定の報酬では採算が合わないことが多いので、消極的にならざるを得ないと思われます。このため、空家流通の促進と報酬規定の見直しが求められていました。

低価格物件の取引における報酬規定の改正について

国土交通省は、空家流通の促進策の一環として媒介報酬額の特例を新たに設けた改正告示を施行しました。

国土交通省が平成29年12月に行った告示改正は、平成30年1月1日から施行され、ほぼ半世紀ぶりの大幅な改正です。この改正は、消費税の創設や税率変更を除けば、実に48年ぶりとなります。

改正内容と影響

改正では、売買又は交換の媒介物件価格が400万円未満の低廉な空家等の取引において、現地調査等の費用を要する場合、報酬額に調査費用相当額の加算が可能となりました。ただし、宅建業者が受領できる報酬額と費用相当額の合計金額は、18万円が上限です。この特例の報酬を受領できる相手方は、売主または交換を行う者である依頼者に限られ、買主または交換の代理の場合は特例による報酬を受け取ることはできません。

取引金額に応じた報酬と費用相当額の上限

取引価額報酬上限額
(告示第2)
受領可能な
費用上限額
100万円5万円13万円
150万円7.5万円10.5万円
200万円10万円8万円
250万円12万円6万円
300万円14万円4万円
350万円16万円2万円
400万円18万円0円
低廉な不動産売買における媒介報酬額の特例による受領可能な費用上限額

取引金額が200万円の場合、規定報酬額を超えて受領できる費用相当額の上限は8万円となります。取引金額が300万円の場合は、4万円が上限となります。400万円以下の取引では上図のように報酬と費用を合わせて上限が18万円となるようになっています。

この改正により、低価格物件の取引における報酬規定が見直されました。これが不動産業者の動機付けになるかと言えば疑問が残るところではありますが、報酬規程について重い腰を上げたというところは評価できる点です。

代理取引の報酬額はどうなるのか?

代理取引の場合は、通常既定の報酬上限の2倍まで請求できます。そのため400万円未満の取引での特例の場合で売買や交換の代理を行う場合の報酬は、報酬上限18万円の2倍まで受け取ることが可能であるとの認識をお持ちの方が多いと思います。
しかし両手取引の場合に買手側からの報酬には特例が及ばないということを踏まえると、代理であっても18万円の倍額は領収できないと考えられます。

取引価格特例上の報酬+費用の上限額通常の報酬規程領収出来る合計額
100万円18万円5万円23万円
150万円18万円7.5万円25.5万円
200万円18万円10万円28万円
250万円18万円12万円30万円
300万円18万円14万円32万円
350万円18万円16万円34万円
400万円18万円18万円36万円
消費税は含まない価格記載です。

東京都で取引をしている方は400万円未満の物件を扱うことは非常にまれであると思われますので、馴染みのない方が多いと思われる特例です。
郊外では使わなくなって放置されている空家が増えてくると思いますので、多めに費用を払ってでも売りたいと思う方も出てくるでしょう。さらなる活性化を狙った政策が発出される可能性もありますので、注目しておいても良いと思います。

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