遺言で指定しても安心できない金銭債務の相続

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金銭債務の法律上の扱い

金銭債務は相続と同時に当然に相続分に応じて分割されます。

相続人数人ある場合において、相続財産中に金銭の他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解すべきである。

最判昭和34年6月19日

ただし、相続分が遺言で指定される場合を考えると、相続人と債権者で認識が異なる場合があります。
例えばある相続人が指定された金銭債務の割合が法定相続割合よりも低い場合、法定相続割合の債務を期待した債権者はどのように請求すればよいのでしょうか。これは民法902条の2に規定があります。

民法第902条の2

被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。

実は、債権者は相続割合を遺言で指定していた場合であっても法定相続分による割合で請求することができるのです。
ただし、債権者が1人の相続人に対して遺言で指定された相続割合での債権請求に応じた場合は、その他の相続人も遺言で指定された相続割合で債務を負うことになります。

具体例

例えば、3人の相続人が1:1:1の法定相続割合だとします。しかし、遺言で、A:B:C=3:1:1の相続割合を指定したとしましょう。

債務が1200万円だと仮定したら

  • A=720万円
  • B=240万円
  • C=240万円

遺言によって以上のような債務割合にする予定です。

しかし債権者はBに対して法定相続分の400万円を請求することができ、Bは遺言を理由にその請求を拒むことは出来ないとしています、

これは言い換えると、債権者が遺言で指定された割合による債権請求をした場合は、相続人たちは、法定相続分での債務分割を主張できなくなるということです。

これらの規定は身内の話である遺言による指定と、債権者との調整を図るものであり、予定していた債務割合との誤差が生じたら相続人間での求償という問題で処理されることになります。 

相続財産にはプラスの財産とマイナスの財産があります。相続の承認方法によって債務を相続しない方法もありますので、終活では家族に財産を明らかにしておきことが大切です。

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