株主総会決議によるキャシュアウト

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株主総会によるキャッシュアウトの手法には、金銭での株式交換、株式併合、全部取得条項付き種類株式の取得が挙げられます。

株式交換

会社法2条での株式交換の定義は次の通りです。

株式交換
株式会社がその発行済株式(株式会社が発行している株式をいう。以下同じ。)の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをいう。

株式交換を行うには、当事会社間で株式交換契約を締結し、各当事会社の株主総会承認を得たうえで行われます。
上の図で説明すると、A社はB社の全ての株式をB社の株主から引き受け、その対価としB社の株主には現金等が交付されます。この結果、A社はB社の完全親会社になります。

元々、「交換」というだけあって株式交換の対価は親会社の「株式等」だったのですが、組織再編における「対価の柔軟化」によって「現金等」で対価を支払うことが可能になりました。
「現金等」には株式も含みますので、親会社は株式を発行して、対価とすることもできますが、キャッシュアウトとしての株式交換の対価は現金です。

「対価の柔軟化」と「現金等」はキーワードとして覚えておくと良いかもしれません。

詳しくは以下の記事を参照ください。

株式併合

株式の併合とは、複数の株式をまとめることで、例えば10株を1株と扱うようにするということです。

株式併合の例

図では、10株を1株とする株式併合を表しています。

24個の株式を持つ場合、株式併合後は、2個の株式と端数になり、8個の株式を持つ場合はすべての株が端数として処理されます。

株式併合による買収でキャッシュアウトする手法は、まず、すべての株式を取得する目的で株式公開買付けを行います。株主総会特別決議を議決できる株式2/3以上を確保したら、公開買付けに応じない株主の排除に動きます。下の図のように排除したい株主たちの株式総数の株数を1株として併合とすることで、排除したい株主たちが持つ株式は全てが1株未満とされ、端数処理されることになります。

株式併合をするためには株主総会特別決議が必要なので、2/3以上の議決権を満たす株式を取得すれば、キャッシュアウトが実現することになります。

株式併合については以下の記事を参照ください。

端数株式の買取請求権

株式併合によって端数が生じる株主は会社に対し、公正な価格で株式を買い取ることを請求できます。

反対株主の株式買取請求権については以下の記事を参照ください。

全部取得条項付き種類株式

全部取得条項付き種類株式の全部取得によってキャッシュアウトするためには、まず、すべての株式を取得する目的で株式公開買付けを行います。株主総会特別決議を議決できる株式2/3以上を確保したら、公開買付けに応じない株主の排除に動きます。すべての株式を全部取得条項付きする意株式に変換し全部取得します。この時の対価をその他の種類の株式にすることで、一に満たない株式を発生させ、株主の排除を行います。

この方式による手続きも事前開示、差止請求、反対株主の株式買取請求、事後開示の流れになっており、株式併合と同じような流れになっています。

全部取得条項付き種類株式の全部取得

全部取得条項付き株式を発行するためには、以下の流れが必要です。

  1. 定款変更を行い、種類株式発行会社となる
  2. 全ての株式を全部取得条項付き種類株式とする定款変更を行う
  3. 全部取得条項付き種類株式を取得する種類株主総会決議を行う
  4. 取得の対価として、全部取得条項付き株式とは異なる株式を与える。

1.~3.までの株式総会はすべて特別決議で行われます。ほとんどの場合1度の株式総会ですべての決議が行われます。

全ての株式が全部取得条項付き種類株式となった場合、買収者が持つ株式と公開買付けに応じない株主が持つ株式はすべて全部取得条項付き種類株式となります。

イラストの例では、買収者が15個の全部取得条項付き種類株式を持ち、排除したい株主たちが持つ株式総数を5個とします。種類株主総会決議で、全部取得条項付き種類株式を取得することが議決され、全部取得条項付き種類株式5個につき、普通株式1個を対価とすることが決まったとします。

すると、排除したい株主たちの株式は1に満たない株式となり端数処理されます。この端数処理は株式併合における端数処理と同様です。

端数処理では、その端数の合計数に相当する数の株式を競売し、かつ、その端数に応じてその競売により得られた代金を当該者に交付しなければならないとされています。