配偶者居住権は民法1028条に規定されている権利です。
被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物の全部について無償で使用及び収益をする権利(配偶者居住権)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
- 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
- 第903条第4項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。
配偶者居住権は、その存続中に賃料等を建物所有者に支払う必要がありません。その存続期間は配偶者の終身に渡るとされており、権利としてはかなり強力なものとなっています。ただし、配偶者居住権は賃貸借のような債権です。住みための強力な権利として所有権を与えるのではダメなのでしょうか?
なぜ、建物の所有権ではなく、配偶者居住権を与えるのでしょうか?
配偶者が、住んでいた建物にそのまま住み続けられる配偶者居住権ですが、建物の所有権を与えればよいのでは?と思いませんか。それは事情の元、配偶者居住権に相続対策のメリットがあるからです。
配偶者居住権は所有権よりも財産価額が低い
配偶者居住権は債権ですので、所有権よりも価額が低く設定されます。その為、所有権を与えた場合よりも、不動産以外の財産を配偶者に相続させることが出来るようになるのです。また、所有権も配偶者居住権によって、本来の権利を妨げられていますので、財産価額は低くなります。
配偶者に建物を所有権として相続させた場合
配偶者居住権を取得した場合
配偶者の生活リスクの軽減が期待できるようになった
これまでは配偶者が自宅の所有権を相続によって取得するという形が一般的でした。しかし、不動産の場合は評価額が高額となることが多いので、上の図のように自宅の所有権を配偶者が相続することで他の財産の相続分が減り、生活費が不足してしまうことが起こり得ます。
「所有権」に比べて、財産価額をより低く見積もられる「配偶者居住権」を配偶者に取得させることで、法定相続の範囲内で住まいと預貯金をバランスよく取得することができるようになったのです。
配偶者居住権の対抗力
配偶者所有権は登記を備えておかないと第三者に対抗できません。例えば、配偶者居住権があることを知らずに、その建物を買った人に対しては、登記が無いと、その居住権を主張することが出来ないとされています。
この登記は所有者の義務とされており、配偶者居住権の登記は、登記権利者である配偶者と登記義務者である居住建物の所有者が共同で申請します。
なお配偶者居住権の設定登記ができるのは建物のみで、その敷地である土地には登記できません。
まとめ
配偶者居住権は令和2年4月1日以降に発生した相続から認められる新しい権利で、配偶者が相続開始後も安心して居住を続けられるように配慮された画期的な権利です。これにより、配偶者は住居に関して金銭的負担を減らし、他の財産とのバランスを取りながら生活設計を立てやすくなりました。
将来を見据えた相続対策を立てる際に、専門家のアドバイスを受けながら最適な方法を模索していきましょう。
相続は個々の家庭の事情によって異なるため、配偶者居住権だけでなく、さまざまな制度や選択肢を活用して、自分たちにとって最適な相続プランを立てることが大切です。
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