株式は、債権の回収を確保するための手段として質権設定をすることができます。

株券が発行される株式の質入れ

株主は、その有する株式に質権を設定することができ、株券発行会社の株式の質入れは、当該株式に係る株券を交付しなければ効力を生じません。(会社法146条)

株券発行会社の株式の質権者は、継続して当該株式に係る株券を占有しなければ、その質権をもって株券発行会社その他の第三者に対抗することができないとされています。(会社法147条2項)

質権設定者は質権者の氏名又は名称及び住所、質権の目的である株式を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができます。(会社法148条)このように登録された質権者を登録株式質権者といい、登録された株式を登録株式質権といいます。

登録株式質権のメリット

株式に設定された質権には物上代位権が生じ、株主が受ける金銭等にも効力が及びます。ただし、質権設定者である株主へ払い渡される前に差し押さえをしなければなりません。一方、登録株式質権者は、会社から直接金銭等を受けとり、他の債権者に先立って自己の債権の弁済に充てることができます。

株券が発行されない株式の質入れ

株券が発行されない会社の株式に質権を設定するには当事者間の契約で足ります。しかし、物がありませんので、株式会社と第三者に対抗するには株式名簿に質権者の氏名又は名称及び住所、質権の目的である株式を株主名簿に登録する必要があります。

振替株式の質入れ

株式等振替制度について

振替株式とは

株主の権利の管理を電子的に行う「株式等振替制度」において、証券保管振替機構や証券会社等に開設された口座で管理されている株式のことです。

証券保管振替機構とは

株式会社証券保管振替機構は、「社債、株式等の振替に関する法律」(振替法)に基づく「振替機関」として内閣総理大臣・法務大臣から指定を受け、上場株式のほか、国債を除く公共債、社債、短期社債(いわゆる電子CP)、投資信託など、資本市場(証券市場)における多岐にわたる種類の電子化された有価証券(振替法の適用を受ける有価証券)の振替その他の総合的な証券決済インフラ業務(振替制度の運営等)を行っている我が国唯一の組織です。

日本で振替機関とは株式会社証券保管振替機構(ほふり)のことを指します。ほふりが扱う株式は、概ね上場されている株式を想像してもらえばよいと思います。

つまり振替株式の質入れとは上場会社の株式に質権を設定するということを想像してください。

振替株式への質権設定 簡略図
  1. 質権設定者の田中さんがSBI証券にある口座のドコモ株100株に対して、高橋さんが楽天証券に持つ口座(質権欄)に振り替えるように申請します。
  2. SBI証券は、「SBI証券にある田中さんの口座」から、「ほふりにあるSBI証券の口座」に振り替えるよう請求します。
  3. ほふりにあるSBI証券の口座から楽天証券の口座に振り替えられます。
  4. 楽天証券に振替済通知が届くと、楽天証券にある高橋さんの口座の質権欄にドコモ株100株が登録されます。

振替株式の質入れは、質権者がその口座における質権欄に当該質入れに係る数の増加の記録を受けることが質権設定の要件となります。またそれを以って株式会社と第三者へ対抗することができます。