定款の備置きと閲覧

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会社の設立を考えている方や、すでに会社を経営されている方にとって、「定款」は会社の基本的なルールブックとして非常に重要な書類です。しかし、この定款をどこに保管し、誰が閲覧できるのか、その具体的なルールをご存知でしょうか? 今回は、会社法に定められた定款の「備置き」と「閲覧」の義務、そしてその違反に対する罰則について解説します。

複雑な定款の備置き及び閲覧等の規定を簡単に理解する。

定款の備置き及び閲覧等は会社法第31条に規定されています。この条文は、会社成立前と成立後の閲覧等に関する規定がカッコ書きを使って一緒に規定されていてちょっと読みにくいので加工しつつ読んでいきます。(原文と比較しつつ読み進めてくださいね。)

定款の備置き及び閲覧等

定款の「備置き」義務

STEP
会社設立前

会社法第31条(定款の備置き及び閲覧等)

  1. 発起人は、発起人が定めた場所に定款を備え置かなければならない。
  2. 発起人は、発起人が定めた時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、書面の交付を請求するには、発起人の定めた費用を支払わなければならない。

一  定款の閲覧の請求
二  定款の謄本又は抄本の交付請求
三  電子定款の閲覧の請求
四  電子定款のプリントアウトの交付請求

STEP
会社設立後

会社法第31条(定款の備置き及び閲覧等)

  1. 発起人は、発起人が定めた場所に定款を備え置かなければならない。
  2. 発起人は、発起人が定めた時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、書面の交付を請求するには、発起人の定めた費用を支払わなければならない。

一  定款の閲覧の請求
二  定款の謄本又は抄本の交付請求
三  電子定款の閲覧の請求
四  電子定款のプリントアウトの交付請求

  1. 株式会社の成立後において、当該株式会社の親会社社員がその権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、定款について前項各号の請求をすることができる。ただし、書面での交付を請求をするには、定められた費用を支払わなければならない。
  2. 電子定款が作成されている場合であって、支店において電子定款の閲覧とそのプリントアウトができる株式会社についての第1項の規定の適用については、同項中「本店及び支店」とあるのは、「本店」とする。

この条文から、以下の点が明らかになります。

誰が備え置くか: 会社の設立準備段階では「発起人」が、そして株式会社が成立した後は「当該株式会社」自身がこの義務を負います。

どこに備え置くか: 設立段階では「発起人が定めた場所」に、会社が成立してからは「その本店及び支店」に定款を備え置く必要があります 。定款がPDFファイルなどの電磁的記録として作成されている場合、会社が支店で閲覧請求に応じるための措置を講じていれば、本店でのみ備え置けばよい、といった特則も存在します。

定款の「閲覧」権

備え置かれた定款は、誰でも自由に閲覧できるわけではありませんが、発起人、株主・債権者などの一定の利害関係者には閲覧する権利が認められています。また親会社の株主は、裁判所の許可を得て、その株式会社の定款について、閲覧や謄本の交付などの請求をすることができます 。

これらの定款またはその電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧や謄写、または書類の謄本・抄本の交付を正当な理由なく拒否することは、会社法に違反します。

定款の備置き・閲覧義務の違反に対する罰則

定款の備置き義務を怠ったり、正当な理由なく閲覧請求を拒否したりした場合には、法的な罰則が科せられる可能性があります。

会社法は、第31条第1項の規定に違反して、帳簿又は書類若しくは電磁的記録を備え置かなかったとき、100万円以下の過料に処すると定めています。 また、前述の通り、正当な理由がないのに、書類や電磁的記録に記録された事項の閲覧、謄写、または謄本・抄本の交付を拒んだときも、100万円以下の過料の対象となります 。

これらの過料は、主に以下の者に対して科される可能性があります 。

  • 発起人
  • 設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役
  • 取締役、会計参与若しくはその職務を行うべき社員、監査役、執行役、会計監査人若しくはその職務を行うべき社員
  • 清算人、清算人代理
  • 持分会社の業務を執行する社員
  • 民事保全法第56条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役、執行役、清算人若しくは持分会社の業務を執行する社員の職務を代行する者
  • その他、会社の経営や運営に関わる広範な役職者

FAQ: よくある質問

定款の備置き場所はどこでも良いですか?

会社法では、本店および支店に定款を備置きすることが求められています。また、電子定款の場合は電子ファイルとして保管されているので閲覧提供できるようにしておく必要があります。

閲覧手続きには費用がかかりますか?

書面の交付を請求する場合、発起人または会社が定めた費用を支払う必要があります。通常、コピー代などの実費がかかります。

電子定款の閲覧はどうやって行いますか?

電子定款は、当該株式会社の社内PCに電子ファイルとして保管しているほか、CD-R等に記録してあります。通常は総務部等が管理しているので、閲覧希望者は、その会社に閲覧申請し許可を受けます。

誰でも定款を閲覧できるわけではないのですか?

定款を閲覧できるのは、株主や債権者、裁判所の許可を得た親会社の株主など、特定の利害関係者に限られます。一般の人が自由に閲覧することはできません。

実務的なアドバイス

  • 定款の管理体制を整える: 定款変更を加えていくうちに原本が紛失するという話もよく聞きます。定款の備置き場所を定期的に確認し、適切な管理体制を整えましょう。
  • 社内周知の徹底: 従業員にも定款の重要性と閲覧手続きについて周知し、閲覧に供する状態であることを再確認することが重要です。
  • 電子定款の検討: 電子定款は管理が容易で、利便性を高めます。信頼性の高いクラウドサービスも活用し、安全に保存しましょう。また印紙税がかからない点も魅力です。

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