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会社法の規定から学ぶ変態設立事項

変態設立事項とは会社法第28条に規定されている定款への記載事項を指します。
では条文を見てみましょう。

会社法第28条(定款の記載又は記録事項)

株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第26条第1項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。

一、金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては、設立時発行株式の種類及び種類ごとの数。第33条第1項第一号において同じ。)
二、株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
三、株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称
四、株式会社の負担する設立に関する費用(定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)

以上のように会社法第28条の変態設立事項はそれぞれ、
一、現物出資
二、財産引き受け
三、会社が成立することで、発起人が受ける報酬
四、成立後の会社が負担する設立費用

これらの行為を指します。これらの行為は定款への記載がなければ無効になります。(行為が無効になるのであって、定款が無効になるわけではありません。)

なぜ変態設立事項は面倒な手続きが増えるのか。

会社の設立をする過程で、定款に変態設立事項の記載が必要になると、原則として裁判所への検査役選任の申し立てなどの手続きが増えます。なぜ面倒な手続きが増えるかというと、変態設立事項に挙げられる行為は、発起人間で扱いが不公平になったり、債権者を害する恐れがあるからです。

【図解】現物出資で不正が起きるケース

この例では3人の出資者が1000万円ずつ財産を出資し合って会社を設立しようとしています。

しかし一人が実際には250万円の価値しかない不動産を1000万円の不動産として出資しようとしています。この結果、他の発起人が現金で1000万出資し、1/3の株式を与えられるのに対し、250万の現物出資で1/3の株式を与えられることになってしまします。

また、資本金3000万円となっても実際は2250万円の価値しかないのですから、表示された資本金を信用した債権者を害することになりかねません。

【図解】財産引き受けで不正が起きるケース

財産引き受けとは、会社が成立したあとに行う売買契約です。

この例では3人の出資者が1000万円ずつの財産を出資し合って会社を設立しようとしています。
ひとまず全員現金で3000万円集まり会社が設立されましたが、一人が、会社に250万円の価値しかない不動産を会社に押し付けて、1000万円の現金が流出しています。

これは結果的に、先の例で挙げた現物出資と同じ結果になっています。

財産引き受けの注意点

現物出資をできるのが発起人に限られているのに対し、財産引き受けは発起人以外でも出来る点です。(財産引き受け自体は通常の売買契約ですので、相手方を限定しません。)

会社法第28条1条3号、4号の発起人への報酬や設立費用についても、現金等の財産が流出しますが、報酬や設立費用はコストですので、資本金が減るわけではありません。ですから、実際より過大または不正なコストを計上すれば、会社財産の基礎が揺らぎかねません。
※資本金はその表示どおりの現金や預金が会社に存在しているわけではありませんので注意してください。これは資本金の部分で触れたいと思います。

これらの弊害を防ぐために変態設立事項の記載がある場合は、厳格な手続きが必要になってきます。