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相続人がいない場合の処理

人が死亡したときに、相続人が誰もいない場合や相続人全員が相続放棄をした場合に、残された財産はどうなるのか。
民法第951条は次のように規定しています。

民法第951条(相続財産法人の成立)

相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。

誰にも属しない財産は処分のしようがありません。債権者や受遺者がいても話す相手方がいないのです。そこで、民法は残された財産に法人格を与えることにしています。しかし会社と同じで法人には法律行為や事実行為を行う際に人が必要です。

民法第952条(相続財産の清算人の選任)
  1. 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
  2. 前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。

相続財産法人が成立した場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければなりません。
この清算人には不在者の財産管理に関する規定が準用(民法第953条)され、相続財産の管理、清算の目的を限度に相続財産法人の代理人としての権限が与えられます。

相続財産法人の清算の流れは以下の通りです。

相続財産法人の成立

相続人がいないことが明らかになった場合は相続財産法人が成立します。

相続財産の清算人選任

相続財産法人が成立したら家庭裁判所は清算人を選任しなければなりません。

相続人捜索のための家庭裁判所による公告

清算人が選任されたら、家庭裁判所は期間を定めて相続人がいればその権利を主張すべき旨を公告します。またその主張すべき期間は6か月以上の期間を設けなければなりません。

相続債権者・受遺者への弁済

清算人は相続債権者と受遺者に対して期間を定めて請求の申し出をすべき旨を公告します。この期間は2か月間以上としなければなりません。その期間に請求の申し出があれば、相続債権者・受遺者に弁済がされることになります。

特別縁故者への財産分与

相続財産の清算後に残存する財産があった場合は、特別縁故者の請求によって全部または一部の財産を与えることができます。

国庫への帰属

最後に残った財産は国庫に帰属することになります。

特別縁故者への相続財産分与

特別縁故者が財産分与を受けらるのはあくまで相続人がいないことが確定した場合に限定されます。一人でも相続人がいる場合には財産分与はありません。

特別縁故者は、

被相続人と生計を同じくしていたもの
内縁の妻・事実上の養子など

被相続人の療養看護に努めたもの
献身的な世話をしてきた人

被相続人と特別の縁故があったもの
生活資金などを援助してきた人

などで、家庭裁判所が認めるものが該当します。

特別縁故者に対する財産分与制度は、家庭裁判所に認められることが必要ですし、他に相続人がいる場合は認められません。そのような場合も遺言を残すことで相続人以外にも財産を残すことが出来ますので、ぜひ活用していきましょう。