外国人留学生が卒業後に日本で就職を希望する場合には、「留学」の在留資格を変更する必要があります。
在学中に就職先が決まっている場合
外国人が大学等を卒業し就業するための在留資格は「技術・人文知識・国際業務」に変更することが一般的です。「技術・人文知識・国際業務」についての詳細は別に譲るとして、ここでは外国人留学生の新たな選択肢について説明していきます。
特定活動(告示46号)
従来の在留資格に該当しない活動を行うために新たな在留資格を創設するためには法改正が必要で、次々に現れる新たなニーズに対応できません。特定活動は法務大臣が個々の外国人について活動を指定することで、新たな活動の範囲を創設することが出来ます。
「技術・人文知識・国際業務」では一般的なサービス業務や製造業務等が主たる活動となるものは認められませんが、留学生が学んだ、日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務を含む幅広い業務に従事することを希望する場合は「特定活動」の在留資格によって、接客等のサービス業務も行うことが出来るようになります。これにより留学生の柔軟な就職選択が可能になります。
「特定活動(告示46号)」の対象
日本の大学・短大・高専を卒業し学士を取った者、又は外国人留学生キャリア形成促進プログラムで認定された専修学校の専門課程の学科を修了し高度専門士の称号を得た者で高い日本語能力※1を有する人が対象となります。
※1日本語能力については以下のいずれかをクリアする必要があります。
- 日本語能力試験N1
- BJTビジネス日本語能力テストで480点以上
- 大学又は大学院において「日本語」を専攻して大学を卒業
具体的な活動例
- 飲食店に採用され、店舗管理業務や通訳を兼ねた接客業務を行うもの。
- 工場のラインにおいて、日本人従業員から受けた作業指示を技能実習生や他の外国人従業員に対し外国語で伝達・指導しつつ、自らもラインに入って業務を行うもの。
- 小売店において、仕入れ、商品企画や、通訳を兼ねた接客販売業務を行うもの。
このように管理業務や商品企画などの「技術・人文知識・国際業務」の要素が業務に含まれていることが必要とされます。接客業務やライン業務のみの業務には就くことが出来ません。
特定活動46号の対象になる方は、かなりハイスペックであると言えそうです。そういう方が「技術・人文知識・国際業務」」ではなくあえて特定活動46号で在留資格を取るメリットは疑問が残るところです。
2024年6月の統計で、「技術・人文知識・国際業務」で在留している外国人は394,295人ですが、特定活動46号で在留している外国人は1,159人となっています。
特定技能
特定技能とは国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とする制度です。
「技能」という在留資格がありますが、こちらは産業上の特殊な分野※1に属する熟練した技能を要する※2活動を行うときに必要な在留資格となります。
※1産業上の特殊な分野とは、外国に特有な産業分野、日本よりも外国の方が技術レベルが高い分野、日本で従事する技術者が少数しか存在しない産業分野とされています。
※2熟練した技術を要するとは、特別な技能判断を必要としない機械的単純作業ではなく、経験値が高く熟練の域にある技術を要するものとされています。
特定技能外国人を受け入れる分野について
特定技能外国人を受け入れる分野は、生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお、人材を確保することが困難な状況にあるため、外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野(特定産業分野)です。
採用条件を緩和しても人材確保が出来ていない分野について、外国人によって人材を確保するための在留資格となっていますので、特定活動のように学歴や日本語能力のハードルは高くありません。
外国人留学生が取るルートとしては、日本語教育機関を経て、特定技能の各分野の試験に合格することが挙げられます。
卒業時に就職先が決まっていない場合
就職活動を行うための在留資格
日本の大学等を卒業した外国人留学生が、「留学」の在留資格の在留期間満了後も日本に在留して、継続して就職活動を行う場合は、就職活動を行うための在留資格へ変更することができます。在留期間は6か月ですが、更に1回の在留期間の更新ができるので、就職活動のために1年間日本に滞在することが出来ます。
就職するための在留資格というものは入管法に存在しませんので、これは特定活動による許可によって実現できるものです。
また、一定の要件を満たせば、資格外活動の許可を受けて1週につき28時間以内のアルバイトが可能です。
特定活動の対象となる外国人
大学等を卒業して就職活動をする方 | 卒業前から引き続き行っている就職活動を行うことを目的として在留を希望していること |
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専門学校を卒業して就職活動をする方 | 日本の専修学校専門課程で専門士の称号を取得し、卒業前から引き続き行っている就職活動を行うことを目的として在留を希望していること 専門課程における修得内容が「技術・人文知識・国際業務」等、就労に係る在留資格と関連があること |
日本語教育機関を卒業して就職活動をする方 | 海外の大学又は大学院を卒業又は修了し、一定の要件を満たす日本の日本語教育機関を卒業していること。 日本語教育機関を卒業する前から引き続き行っている就職活動を行うことを目的として在留を希望していること。 |
要件には「卒業」とありますが、卒業前でも卒業見込証明書を添えることで変更申請は可能となります。
留学生が日本で働くために申請する在留資格は、「技術・人文知識・国際業務」が殆どを占めていますが、列記された在留資格以外での活動を可能にする特定活動はこれから様々なニーズに対応する可能性を持っています。
内定から就職まで期間が空く場合
在学中に就職内定したが、就職の開始が卒業から期間が空く場合や、継続就職活動の特定活動で就職活動をして内定を取ったが、就職まで空白期間があり、在留期間を過ぎてしまう場合が考えられます。
卒業したら「留学」の在留資格はなくなってしまいますし、継続就職活動の特定活動の在留期間も過ぎたら在留資格がなくなってしまいます。
このような時は、就職時期までの滞在を目的とした「特定活動」の在留資格への変更が認められます。