改正民法後の法定更新でも連帯保証契約は有効か~極度額未記載の主張が棄却された事例

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令和2年の民法改正により、個人が保証人となる保証契約には「極度額の定め」が必須となりました。宅建業者としては、賃貸借契約の更新時や保証契約の見直し時に特に注意が必要なポイントですが、今回ご紹介する判決では、「改正民法の適用を巡る主張」が争われた事案です。

事案の概要

平成28年に賃貸借契約が締結され、賃借人Y1の父親Y2が連帯保証人となりました。その後、平成30年に賃貸借契約が更新された際に、以下の特約が盛り込まれていました。

  • 【13条1項】…賃借人は1か月前までに申入れれば解約できる
  • 【19条1項】…「本契約が合意更新あるいは法定更新された場合も同様とする」とし、連帯保証契約の継続を明記

令和元年以降、賃料の滞納が発生し、連帯保証人であるY2が一部支払いを行っていましたが、その後も賃借人の滞納が継続。賃貸人Xは、賃借人Y1に建物明渡しを、Y2に滞納賃料の支払いを求めて訴訟を提起しました。

これに対し、連帯保証人Y2は、

「令和2年4月の民法改正後、極度額が定められていないので、法定更新された契約に基づく保証契約は無効」
と主張しました。

裁判所の判断

裁判所は、以下のポイントを重視して、賃貸人の請求を全面的に認容しました。

解約の申入れは有効であり、契約は終了している

Y1が、令和2年10月15日、管理会社に対し、同年11月15日に退室する旨連絡したこと、本件賃貸借契約13条1項は、Y1は、Xに対し、1か月前までに解約の申入れを行うことにより、本件賃貸借契約を解除することができる旨定めていること、管理会社の担当者が、Y1に対し解約明渡しの手順について説明したこと等の事実が認められ、これらの事実を踏まえると、Y1は、同年10月15日、Xに対し、本件賃貸借契約の解約の申入れをしたものというべきである。

Y1は、管理会社の担当者から指示された手続をその後に行っていないことを根拠として、解約の効果が発生していないと主張するが、同不作為は解約申入れの効果を妨げるものではないから、Y1の主張は、採用することができず、したがって、本件賃貸借契約は、令和2年11月15日の経過をもって解除されたものと認められる。

東京地裁令和2年2月7日判決

賃借人Y1は、11月15日に退去する旨を明確に伝えており、管理会社も解約通知として受領。実際に手続を完了していなかったとしても、解約の意思表示は有効と認定されました。

保証契約には改正民法は適用されない

Y2は、本件連帯保証契約について、改正民法が適用されるとの前提で、改正日以降に発生したY1の債務について責任を負わないと主張するが、本件連帯保証契約は、改正民法の施行日(令和2年4月1日)より前に締結されたものであり、その後、本件賃貸借契約の更新に合わせて同保証契約が更新されることもなかったから、改正民法の適用がなく(平成29年法律第44号附則21条1項)、また、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情は認められない

東京地裁令和2年2月7日判決

連帯保証契約は改正民法施行前に締結されており、その後保証契約自体が明示的に更新された形跡はないため、「極度額」の規定が適用されるものではないと判断。

契約書の条項で保証継続の意思が確認されている

本件賃貸借契約の19条1項が、連帯保証債務について「本契約が合意更新あるいは法定更新された場合も同様とする。」と定めていることから、Y2において、各更新(平成30年11月4日付けの合意更新及び令和2年11月13日の法定更新)後の本件賃貸借契約から生ずるY1の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意がされたものと解するのが相当

東京地裁令和2年2月7日判決

19条1項により、「合意更新・法定更新された場合も同様に連帯保証契約が継続される」と明記されていた点が極めて重要とされました。これにより、保証人Y2も、更新後に発生した債務について責任を負うことが契約上明確であったと解釈されました。

宅建実務への示唆

今回の事案では、保証契約自体の更新がされていないという点と、契約書における明確な文言の存在が大きな意味を持ちました。

  • 改正民法施行前に締結された保証契約には、原則として新法は適用されない
  • ただし、契約書上で更新時の保証の継続について明示的に定めておくことが極めて有効
  • 賃貸借契約の条文に「更新後も連帯保証は同様とする」旨の条項を設けることで、トラブルの予防につながる

令和2年の民法改正以降、本件のように、契約書の記載次第では、改正法の影響を受けず保証が継続されるという判断が下される可能性があるため、「いつ契約が締結されたか」「更新内容に何が書かれているか」をしっかり確認することが肝心です。

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