期限延長は書面合意がなければ無効とされた事例
事案の概要
買主は、融資特約による手付金返還を求める訴訟を起こしましたが、売主は買主の違約による解除を求め反訴しました。
裁判所の判断ポイント
融資特約による解除は有効か
認定事実等から、買主と売主との間で本件延期合意が成立したとは認められず、融資特約に基づく解除権の行使期限についての延期も認められないから、買主の融資特約に基づく解除権の当初の行使期間より後にされた解除は、無効と言わざるを得ない。
売主の違約解除は有効か
売主は本件土地上の建物解体工事に着手しており、代金支払期限までに引渡しの準備を整えて履行の提供をしていたものと推認できることから、売主の契約解除は、買主の債務不履行に基づく解除として有効と認められる。
融資特約期限等の延長合意は成立したか
買主は、売主が代金支払期限を延期することに応じたと主張し、媒介業者も同旨の証言をする。しかし、そのような合意書案は書証として買主から提出されておらず、そうすると、媒介業者と売主とのやり取りの中で、代金支払期限延期に応じる可能性を示唆する発言がされた可能性は否定し得ないものの、延期合意があったとする適確な証拠は無いと言わざるを得ない。
令和3年3月15日判決
まとめ
契約期限の変更は「書面合意」なくして成立しない
口頭合意やメール草案では足りず、期日後の解除主張は通らない。
宅建業者にとっては、期限管理と合意書面化が最重要のリスクコントロールです。
「結論が出るまで少し待ってほしい」「先方は延ばす気がありそう」――こうした曖昧な状況でも、原契約の期限は刻々と近づきます。媒介業者・売主・買主のいずれの立場でも、期限前に署名済み書面を確保できなければ、リスクが顕在化します。
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