この事例は、フルリフォームと謳い販売した中古マンションで排水不良が発生した事案で、瑕疵担保責任による損害賠償を求める買主と、排水不良は経年劣化によるものだとする売主の主張がぶつかりました。
事案の概要
買主による主張
- 本件マンションは居住用建物であるので、台所の排水管のつまりは、取引上期待される品質性能を欠いている
- 売主は「新築同様にフルリフォーム」と表示して販売しており、本件マンションが新築同様の品質性能を備えていると保証したと言える
- 排水管内部の瑕疵は買主が通常の注意を払っても発見し得ない
- マンションでは共有部分も売買対象であるので、売主の瑕疵担保責任は免責されない
- 売主は説明責任を負っているのに、必要な調査を行わず、説明も行わなかったので、説明義務違反による不法行為責任が成立する。
買主による主張は以上の通りです。共用部について言及していることから、排水管のつまりは共有部分で生じていたようです。
排水管が共有部分であるか専有部分であるか
最近の床配管の仕様
最近のマンションは、床スラブの上に排水管があり、この排水管は専有部分とされています。このタイプのマンションであれば、フルリフォームで排水管を取り替えるので、今回の事案のようなトラブルはなかったのかもしれません。

築古の床配管の仕様
築古のマンションは、床スラブの下に排水管があり、この排水管は共有部分とされています。このタイプのマンションは、排水管の修理に階下の天井を剥がして行う必要がありますので、単独で修理ができません。フルリフォームを行うのは専有部分だけですので、排水管は既存のまま利用します。今回の事案はこのタイプなのだと推測されます。

裁判所の判断
- 問題の流し台について、一度に多量の水を流すと一時的なつまりは生じるものの、短時間のうちに流れきる程度のものであり、特別支障になるとは認め難い。
- 本件マンションは昭和43年に建築されており、売買契約当時は築44年が経過していた。そのような建物の設備においては客観的に見て、新築に劣る部分があることは当然想定される。
- この程度の流水の状況では築年を経過したマンションとして当然有すべき品質性能を欠くとは認め難い。
- 建築から相当の年数を経過した中古マンションであるということは売買契約の前提であり、フルリフォームを謳ったマンションであっても、新築同様の品質性能を備えることはおよそ期待できる状況にはなかった。
以上のことから、本件マンションに瑕疵が存在していたとは認められず、またその瑕疵が存在していないことから、説明義務を追う余地はなく、買主の請求に理由はないとしました。
本事例ではどの程度説明しているか不明ですが、建築の年代によって排水管が共有か専有か別れますので、その説明はしっかりと行う必要があります。共有部の補修はマンションによってはかなりの困難が生じますので、説明の仕方によってはこの事例とは異なる判断がさせる可能性は大いにあります。
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