手附解除期限の特約が宅建業法で無効とされる事例

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この事例では、融資特約による契約の白紙解除を求める個人買主に対し、手付解除期限が過ぎていることを理由に手付解除ではなく違約金の支払いを求める売主宅建業者の主張がぶつかりました。

事案の概要

不動産売買契約を締結

某年2月28日、売主:宅建業者、買主:個人は1億4,980万円でマンション用地の売買契約を締結。

  • 手付金は200万円
  • 手付解除期限は3月7日
  • 融資特約付契約、融資特約による解除期限は4月20日
  • 残代金および引き渡し期限は4月30日
  • 違約金は1,498万円
融資特約とは

融資特約とは、金融機関の融資を利用する予定で物件の購入を申し込んだ際に、融資審査に通らなかったときは、売買契約を白紙撤回できるという内容です。融資特約によって契約を解除した場合は、手付金は買主に満額返還されます。

融資特約期限後の買主からの白紙撤回要求

融資特約の期限は4月20日まででしたが、その期日までに融資が承認されませんでした。買主は、融資特約の期限を4月28日まで延長するという売主の内諾を得ましたが、結果的に融資承認は降りずに、買主は4月28日に融資特約による白紙撤回を求めました。

話の食い違いによる紛争

これに対し、売主は、融資特約の期限延長の内諾はしていないとし、債務不履行を理由とする契約解除で違約金を求めました。

裁判所の判断

融資特約期限延長について

買主は、融資特約の期限延長について売主との合意があったと主張しましたが、売主からは、銀行の融資内定を記す書面か、中間金の支払いをしないと期限延長の合意に応じられないとした事実があり、合意書に署名押印もしておらず、裁判所はこの合意の存在を認めませんでした。

手付放棄による解除の成否

宅建業者が売主となる今回の取引は、手付放棄ができる期間を設けており、解約のときはすでにこの期限を超えていました。高額な違約金を支払うよりは、手付金を放棄して解約するほうが買主に有利になりますがこの場合はどうなるでしょう。

宅建業法では次のように規定しています。

宅地建物取引業法第39条(手付の額の制限等)
  1. 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の10分の2を超える額の手付を受領することができない。
  2. 宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手付を受領したときは、その手付がいかなる性質のものであつても、買主はその手付を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
  3. 前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする。

このように買主は手付金を放棄すれば契約を解除することができます。手付放棄による解除は、相手方が履行に着手するまではいつでもできます。この規定に反する特約は無効となりますが、今回の契約内容はどうでしょうか。

宅建業者が売主の場合は、本来なら相手方が履行に着手するまでなら、いつでも手付解除ができるはずなのに、この契約では期限を設けています。この点、買主が不利になります。

裁判所は、この手付解除期限の特約が宅建業法第39条に違反して無効としています。

このため、まだ履行に着手していない状況では、買主は手付解除ができる状況にあるので、債務不履行にならないと判断されています。


このように宅建業者が売主の場合は、以下の点に注意が必要です。

  • 手附解除期限を設ける特約は、宅建業法に違反して無効になる
  • 残代金支払期限を過ぎても買主は履行に着手する前なら、手附放棄で解除できるため、即違約にならない
  • 手附解除期限を設ける特約は、業法違反として行政処分の可能性もある

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