「不動産会社から測量や境界立会のついでに私道の通行掘削等承諾書を取ってくれと言われて困っている」最近、土地家屋調査士の先生方よりこのような話を聞きます。不動産会社からすると、土地家屋調査士は測量で近隣の方々に声掛けをしているので、その流れでお願いしたいという気持ちがあるのはわかります。
土地家屋調査士の業務
土地家屋調査士は次のように登記に関する調査、測量を行い、隣接所有者の立会いで境界確認を行い境界立会確認書として書類作成をします。
不動産の表示に関する登記につき必要な土地又は家屋に関する調査及び測量をすること。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji117.html-法務省ホームページ
(土地又は家屋に関する調査及び測量とは,不動産(土地又は建物)の物理的な状況を正確に把握するためにする調査,測量を指し,例えば,土地の分筆登記であれば,登記所に備え付けられた地図や地積測量図等の資料,現地の状況や隣接所有者の立会い等を得て公法上の筆界を確認し,その成果に基づき測量をすることが挙げられる。)
私道の通行掘削等承諾書はどのような書類か
「私道の通行掘削等承諾書」は合意書に類するものですので「権利義務に関する書類」ということになり、これを作成する事務を業とするのは行政書士または弁護士となります。
ですから、土地家屋調査士事務所に私道の通行掘削等承諾書を依頼するときには、承諾書自体は不動産業者が書類を作成しているのではないでしょうか。
土地家屋調査士の先生方は私道の通行掘削承諾書の業務を行うことについて微妙な気持ちでいると思います。
- 懇意にしている不動産会社からの頼みを断れない。
- 忙しいので測量とは関係ない業務はやりたくない。
- 土地家屋調査士の業務ではない。
このようなことから、境界確認書の取り交わしを行うついでに、渋々私道の通行掘削承諾書の取得業務を行っている土地家屋調査士事務所がありますが、私道の通行掘削等承諾書作成取得のみの業務を単独で引き受ける土地家屋調査士事務所は無いと思います。
その他、土地家屋調査士が渋い顔をする書類
狭隘道路の拡幅協議申請
狭隘道路の拡幅協議申請を、土地家屋調査士事務所にお願いするとちょっと渋い顔をされると思います。もちろん土地の測量に付随して道路の測量も行いますので、拡幅協議申請には測量士事務所や土地家屋調査士事務所が作る測量図が必要になります。しかし土地家屋調査士が自治体への拡幅協議代理申請を業として行うことはできません。
拡幅協議には建物の建築が絡みますので建築士が代理申請することが多いでしょう。もちろん行政書士も行政庁への代理申請は出来ますが、申請するのは施主または建築士など工程が分かる方がよいでしょう。これは拡幅整備の実施スケジュールが絡むため、自治体と工程について調整しなければならないからです。
越境の覚書
越境は測量結果によって発見されます。そのため「越境の覚書」の取得を土地家屋調査士事務所が引き受けることが多いと思います。
「越境の覚書」は隣地との合意書なので、その相手方は境界確認書の相手方と同じです。そのため土地家屋調査士が境界確認書を作成取得するときに同時に「越境の覚書」も取得するケースが多いのですが、実は「越境の覚書」作成については業務としては引き受けてはいないと思います。「越境の覚書」の書類作成は不動産会社が行っていることが多いのではないでしょうか。
越境を発見するためには前提となる測量が必要ですが、「越境の覚書」は、土地家屋調査士事務所に依頼した依頼人だけではなく隣地の方もからむ契約書です。そのため、越境についての合意内容を定めるのは当事者が自ら行わなければなりません。作成代理を依頼する場合は「権利義務に関する書類」になりますので、行政書士か弁護士に依頼することになるでしょう。
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