融資特約期限・残代金支払期限の「口頭延期」は通用しない

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期限延長は書面合意がなければ無効とされた事例

事案の概要

某年7月26日 買主はホテル建設を目的として売主(宅建業者)と土地の売買契約を締結した。

  • 売買価格:1 億 9,600 万円(手付金 500 万円)
  • 融資特約期限:同年 8 月 26 日
  • 残代金支払日:同年10 月 18 日
  • 違約金:売買代金の 10%
  • 買主の目的:ホテル建設(融資総額 4 億 5,560 万円)

同年8月23日 建築確認の取得後でなければ融資ができないことから、買主は、代金支払期日を延長できなければ契約を解除すると、媒介業者を介して売主に伝えた。

売主は代金支払期日の延長については検討するので契約解除はしないでほしいと買主に伝える。代金期日の延長を前提に売買契約を維持することになったが、その直後に媒介業者は、売主からつなぎ融資の検討を求められ、それならば融資特約の承認期限を延長するように売主に申し入れた。

媒介業者は融資承認期限を8月23日→9月17日に、融資特約の解除期日を8月26日→9月19日に変更する旨の合意書案を作成し、売主にメール送信をした。

同年8月26日 売主は金融機関の実行日の前倒しを媒介業者に求め、融資承認期日等延長の合意書の取り交わしも拒否した。

同年9月18日 売主は代金支払期日の延長を拒否し、つなぎ融資によって契約決済を行うように求めたが、買主はつなぎ融資の利用を了承せず、売主から合意解除の提案がなされるも条件が整わず成立しなかった。

買主は、融資特約による手付金返還を求める訴訟を起こしましたが、売主は買主の違約による解除を求め反訴しました。

裁判所の判断ポイント

融資特約による解除は有効か

認定事実等から、買主と売主との間で本件延期合意が成立したとは認められず、融資特約に基づく解除権の行使期限についての延期も認められないから、買主の融資特約に基づく解除権の当初の行使期間より後にされた解除は、無効と言わざるを得ない。

売主の違約解除は有効か

売主は本件土地上の建物解体工事に着手しており、代金支払期限までに引渡しの準備を整えて履行の提供をしていたものと推認できることから、売主の契約解除は、買主の債務不履行に基づく解除として有効と認められる。

融資特約期限等の延長合意は成立したか

買主は、売主が代金支払期限を延期することに応じたと主張し、媒介業者も同旨の証言をする。しかし、そのような合意書案は書証として買主から提出されておらず、そうすると、媒介業者と売主とのやり取りの中で、代金支払期限延期に応じる可能性を示唆する発言がされた可能性は否定し得ないものの、延期合意があったとする適確な証拠は無いと言わざるを得ない。

令和3年3月15日判決

まとめ

契約期限の変更は「書面合意」なくして成立しない
口頭合意やメール草案では足りず、期日後の解除主張は通らない。

宅建業者にとっては、期限管理と合意書面化が最重要のリスクコントロールです。
「結論が出るまで少し待ってほしい」「先方は延ばす気がありそう」――こうした曖昧な状況でも、原契約の期限は刻々と近づきます。媒介業者・売主・買主のいずれの立場でも、期限前に署名済み書面を確保できなければ、リスクが顕在化します。

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