境界塀の一部が数センチ越境してたら、勝手に取り壊していいの?

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昔からある所有者が不明の境界塀が自分の土地に越境している場合に、勝手に取り壊しても良いのでしょうか。

これは土地を購入した買主が、その土地の境界線上に設置された所有者不明の境界塀のうち越境部分の建替え工事を行うため、隣地所有者に対し、土地の一部使用及び工事の妨害禁止を請求した事案です。

事案の概要

不動産売買契約を締結

某年10月22日 土地の買主Aが売主から土地購入。この土地と隣地所有者との境界線上には境界ブロック塀があり、その一部が越境していました。売買契約書には「境界塀の所有者は不明です」との一文。

Aが隣地所有者にブロック塀の新設を持ちかける

翌年12月3日 Aは、隣地所有者に対し越境部分を取り壊し、改めて境界に沿ってAの土地側に境界塀を新設するために隣地所有者に土地の立ち入りなどの協力を求めました。

Aから隣地所有者へ訴訟の提起

Aは隣地所有者から工事の協力を得られなかったことから、ブロック塀の越境部分はAの単独所有物として工事を強行しようと、隣地所有者に対し土地の使用の承諾、工事の妨害を行わないことを求める請求を提起しました。

裁判所の判断

越境部分のブロック塀をAが単独で取り壊しをすることが出来るかについて裁判所は次の通りAの請求を棄却しました。

本件境界塀は、コンクリートブロックで構成されたブロック塀で、隣地所有者が土地を購入した昭和55年当時から現在の位置に存在していた。その本件境界塀の全長は9メートル強あり、そのうち本件越境部分の長さは3メートル弱で、Aの土地への越境の程度は最大でも数センチメートルである。

昭和55年からAが土地を購入するまでの間、土地所有者との間では、本件境界塀ないし本件越境部分に関し、何らかの紛争が生じたことはなかった。

隣地所有者とAの前所有者は、本件境界塀の一部(その一部分は本件越境部分に該当する。)が損壊した際、その補修工事を共同で実施し、その費用を折半した。

前記認定事実のとおり、本件境界塀のうち3分の2強は境界線上に存在し、本件越境部分は3分の1弱にとどまる上、越境の程度もわずか数センチメートルにすぎない。このような客観的状況に加え、本件境界塀の大部分を境界線上に設けておきながら、その一部のみを敢えて越境させる合理的理由も見出せないため、境界線上に本件境界塀を設ける予定であったものの、意図しないところでその一部が越境してしまったと考えるのが最も自然である。そして、隣地所有者同士の間では、隣地所有者が土地の所有権を取得するまでの数十年間にわたり本件越境部分について紛争が生じたことはなく、本件境界塀の一部が損壊した際にも、隣地所有者同士がその費用を折半して補修工事を実施したことなどを考慮すれば、本件境界塀は、隣接者との共有に属するという前提で設置されたものと推認するのが合理的である。

また、隣地所有者は、境界立会いの際、本件境界塀の所有関係について何ら異議を唱えなかったことから、本件境界塀について自身に共有持分があるとの認識を全く有していなかったことが推認される旨主張するが、境界立会いは、土地の境界を確認するもので、本件境界塀の所有関係を確認するものではないし、その際の当該所有関係について話題に上ったことをうかがわせる事情も存在しない以上、境界立会いの際に本件境界塀の所有関係について述べなかったことをもって自身に共有持分があるとの認識を有していなかったなどと推認すことはできない。

以上によれば、本件境界塀は、本件越境部分を含めて隣接者間の共有に属するものと認めるのが相当であり、本件越境部分がAの単独所有であるとか、所有者が不明である旨のAの主張は理由がないから、隣地所有者の同意がない本件においては、Aが単独で本件越境部分を取り壊すことができない。

ブロック塀の越境について

境界確認を行う際に、ブロック塀の越境を発見することはよくあることです。

どちらの所有かわからないブロック塀が越境している場合に、「越境物」として説明するかどうかが問題になります。民法では、境界上にある塀は共有に属すると推定されます。

民法229条

境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。

「推定する」とは当事者間の取り決めがない場合又は反証がない場合に、ある事柄について一応こうであろうという判断をすることを言います。

東京都の住宅街では境界線を中心にブロック塀を積んでいることが多く、代を重ねたり、所有者が転々とした場合に、ブロック塀の所有が不明になることが多くあります。

民法229条のように、反証がなければ境界線上の塀は共有物として考えられます。共有物であれば自分の物でもあるので、自分の土地に存在するブロック塀は「越境物」ではないかもしれません。

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