賃貸借契約の更新契約書に署名をしない連帯保証人

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更新後の賃貸借契約における連帯保証人の責任

最初の賃貸借契約には連帯保証人として署名したが、更新契約書には署名しなかった場合に、更新後に起きた賃料不払いにも連帯保証人として責任を負うのか。

これについて争われた裁判の内容について解説します。

紛争の内容

最初の賃貸借契約

貸主X、借主Y1はXが所有するマンションについて、契約期間2年、月額26万円の条件で賃貸借契約を締結した。

連帯保証契約の締結

借主Y1の兄であるY2は貸主Xと、賃貸借契約に基づき連帯保証人となる契約を結びました。

複数回の更新契約

その後、賃貸借契約を2年ごとに複数回更新したが、その更新の際に連帯保証人Y2は保証を継続する意思確認の問い合わせを受けたことはありませんでした。

更新の際の家賃改定

この賃貸借契約では2回目の更新では月額31万円に、3回目の更新では月額33万円と家賃が改定されていました。

家賃の滞納が始まる

2回目の更新から次第に借主Y1の家賃滞納が始まり、3回目の更新時期にはほとんどの家賃が支払われない状況でした。

貸主Xは滞納家賃を連帯保証人Y2に請求

貸主Xは借主Y1が滞納した家賃853万円を、連帯保証人であるY2に請求する訴訟を提起しました。

当事者の主張

貸主Xの主張

賃貸借契約の連帯保証人は、借主が建物を明け渡すまでの一切の金銭債務の履行について、 借主とともに責任を負うもので、更新契約に署名・押印したか否かは関係ない。

連帯保証人Y2の主張

  1. 更新前の契約と更新後の契約との間には法的同一性はなく、更新前の契約に付された敷金以外の担保は、特別の事情がない限り、更新後の契約には及ばないはずであり、当初の契約にしか署名・押印せず、更新に際しては、連帯保証人に対して保証意思の確認の問い合わせがされたことも、引き続き保証人になることを明示的に了承したこともなかったのであるから、更新後の賃料不払いについて責任を負う必要はない。
  2. 仮に連帯保証人が更新後の賃料不払いについて責任を負わなければならないとしても、 Xは、長期にわたりY1の賃料不払いを放置して、契約解除や連帯保証人への連絡もせず、 未払賃料額を853万8,000円に増大させたもので、連帯保証人への請求は信義則に反する。

判決の要旨

  1. 建物の賃貸借は、本来相当の長期間にわたる存続が予定された継続的な契約関係であり、期間の定めのある建物の賃貸借においても、賃貸人は、正当事由を具備しなければ更新を拒絶することができず、賃借人が望む限り、更新により賃貸借関係を継続するのが通常であって、賃借人のために保証人となろうとする者にとっても、賃貸借関係の継続は当然予測できるところである。
  2. 保証における主たる債務が定期的かつ金額の確定した賃料債務を中心とするものであって、保証人の予期しないような保証責任が一挙に発生することはないのが一般であることなどからすれば、賃貸借の期間が満了した後における保証責任について格別の定めがされていない場合であっても、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、更新後の賃貸借から生ずる債務についても保証の責めを負う趣旨で保証契約をしたものと解するのが、当事者の通常の合理的意思に合致するというべきである。
  3. 賃借人が継続的に賃料の支払を怠っているにもかかわらず、賃貸人が、保証人にその旨を連絡するようなこともなく、いたずらに契約を更新させているなどの場合に保証債務の履行を請求することが信義則に反するとして否定されることがあり得ることはいうまでもない。

結論

期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のために保証人が賃貸人との間で保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意がされたものと解するのが相当であり、保証人は、賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義別に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れないものというべきである。

本事例から学ぶこと

以上のように、更新契約書に署名をしていない連帯保証人であっても、当初の賃貸借契約が継続していれば借主の債務について引き続き、連帯保証債務を負うとしています。

ただし、借主が継続的に家賃を滞納しているにも関わらず、賃貸人が保証人にその旨を連絡することもなく、漫然と契約を更新しているなどの場合は、信義則に反して、連帯保証契約による債務の請求が認められないこともあり得るので、滞納事故の発生の連絡はまめに行い、将来のために連絡の内容、日時などはメモを残しておくなどの対策が必要になってくると思います。

最近は連帯保証人ではなく保証会社を利用することが多いと思います。その場合は、身内などに緊急連絡先をお願いするケースが出てきますが、この緊急連絡先の住所や電話番号に変わりがないか定期的に確認する必要があります。

緊急連絡先は保証人ではないので金銭債務を負いませんが、借主と連絡を取れなくなった場合のつなぎ役になってもらわなければなりませんので、緊急連絡先へのアクセス確保は重要です。

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