建替え決議と売渡請求
建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第62条に基づく建替え決議と、区分所有法第63条の売渡請求権は、全ての区分所有者にとって強い強制力を持ち、大きな影響を与えます。この法律に基づき、マンションの建替えが決定されると、反対する所有者にも参加の意思表示が求められます。
区分所有法第63条の概要
概ねこのような法律の立て付けになっています。
区分所有法第63条の売渡請求権の強制力
建替え決議に賛成した区分所有者から、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者に対して、区分所有法第63条第4項に基づく売渡請求が行われた場合、建替えに参加しない区分所有者はこれを拒むことが出来ません。この売渡請求権は形成権とされており、売渡請求権行使の意思表示が相手方に到達すると直ちに、相手方の区分所有権及び敷地利用権を目的とする時価による売買契約が成立するとされています。さらに平成16年7月13日の東京地裁判決では、建替えに参加しない区分所有者が賃貸借契約によってその建物を貸していた場合にも、借家人を退去させ、建物を引き渡す義務があると明示されました。
形成権
形成権とは、権利者の一方的な意思表示によって一定の法律関係を発生させたり、消滅させたりする権利を言います。区分所有法第63条による売渡請求権は、一般的な売買契約のように双方の合意で締結されるものではなく、売渡請求権の行使するという通知で売買契約が成立してしまうというかなり強い権利となります。
東京地裁平成16年7月13日判決の事案について
この判例では、マンションの管理組合の理事長が、建替え決議に賛成しない区分所有者に対し、区分所有法第63条に基づく回答を求め、その後、売渡請求を行いました。回答がなかったため、売渡請求に基づき、区分所有建物の所有権移転登記手続き、区分所有建物の借家人退去、敷地利用権の譲渡を求めました。
裁判所は、売渡請求権行使により、借家人を退去させる義務が発生するとし、区分所有者が負う義務の具体的な範囲が明らかになった重要な判決となります。