17年前に販売した分譲地の土壌汚染に関する説明義務違反

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岡山地裁判決平成23年5月31日

本件は、岡山地裁で審理された分譲地の安全性および快適性に関する情報の説明義務違反による損害賠償請求に関する事例です。以下に紛争の経緯を詳述します。

購入と問題発覚の経緯

  1. 土地購入と建物建築
    買主Xは平成2年8月に売主業者Yから分譲地の一区画を購入し、同時に売主の宅建業者Yとの間で建物建築の請負契約を締結しました。土地売買代金と建築工事請負代金の合計額は約2,500万円でした。建物が完成した後、Xはこの建物に入居しました。
  2. 悪臭汚泥の発見と土壌汚染
    平成16年、市が上下水道の給水管取替工事を実施した際、土地から油分を大量に含んだ悪臭を放つ黒い汚泥が発見されました。この汚泥の土壌分析を行った結果、土壌汚染対策法に基づく土壌溶出量基準を超えた有害物質および油分等が検出されました。
  3. 土地の履歴と過去の工場
    本件土地は宅建業者Yが取得する以前、A工業の工場が存在していました。この工場では、石けんやペンキの原料となる油を生成していました。しかし、実際には産業廃棄物処理業を行っており、近隣住民からは悪臭や工場内の廃白土、汚泥、水質汚濁等に対する苦情が寄せられていました。
  4. 土地の購入と宅地造成
    宅建業者YはA工業に悪臭等の改善を要求しましたが、対策が講じられることはなく、最終的に宅建業者YとA工業の間で「A工業は操業を停止し、土地上の廃白土、油脂付着物等を除去して明け渡す。宅建業者YはA工業に対し、建物除却費用および移転費用等を支払い、工場跡地を購入する。」等の内容で調停が成立しました。その後、Yは本件土地を含む工場跡地を取得し、消臭工事等の対策を講じた上で宅地造成を行い、順次分譲しました。

Xの提訴

平成19年、XはYに対し、「Yは宅地造成して販売すべきでなかったのに販売した。売主として本件分譲地の履歴等を説明すべきであったのにしなかった」などを理由に、不法行為に基づく損害として土地建物取得費、慰謝料および弁護士費用・合計約5,900万円の支払いを求めて提訴しました。

当事者の言い分

買主Xの言い分

  1. 不動産販売業者の義務
    不動産販売業者は、健康的にも社会的にも安全な土地を提供する義務がある。本件分譲地の取得前の状況からすれば、Yは本件土地に健康を害する物質等が含まれることを予測できたはずで、そのような土地を宅地造成し販売したことは不法行為(民法第709条)に当たる。
  2. 説明義務
    健康に害を及ぼす危険のある土地を販売する以上、土地の履歴等を説明すべき義務がある。Yが安全性・快適性に関する情報の調査・報告をしなかったことは不法行為(民法第709条)に当たる。

売主宅建業者Yの言い分

  1. 認識の有無
    従前の工場について悪臭等の問題はありましたが、土壌中に有害物質が存在することは認識していませんでした。また、土壌汚染対策法が制定されたのは平成14年であり、分譲地の販売当時には予測もできませんでした。宅建業者Yは悪臭等に対する十分な措置を取って分譲地の販売を行ったため、これが不法行為になることはありません。
  2. 認識不可能
    宅建業者Yは本件土地の危険性を認識し得なかったため、認識し得たこと等を前提とするXの主張は認められません。
  3. 時効
    Xの損害賠償請求権は、時効により消滅しています。

問題点に対する裁判所の判断

  1. 土壌汚染対策法が制定される前に、規制値を超える汚染物質や油分を含む土地を販売することは不法行為に当たるか
    地中にいかなる物質が含まれているか、またその物質の有害性について、認識できたとは言えず、宅建業者Yが分譲地を販売したことは、直ちに不法行為に当たるとはしていません。
  2. 土地の履歴に基づく説明義務の有無
    土地の過去の利用状況や周辺環境に関する情報を売主が認識していた場合、これを買主に適切に説明する義務があります。この義務を怠ることは、不法行為に該当する可能性があります。

本事例の結末

裁判所は、Yが土地の有害物質を認識することができたとは言えないが、土地の履歴や周辺住民からの苦情、行政指導の存在を認識していたことから、詳細な調査とその説明を行う義務があったと判示しました。結果として、Yの義務違反が認められ、損害賠償として1,370万円が認められました。

まとめ

本事例は、土地売買における売主の説明義務の重要性を強調しています。以下の点に学ぶことができます。

  1. 説明義務の重要性
     本事例は、売買当時の法律規制がなかった場合でも、土地の履歴や周辺環境から危険性を認識できた場合に説明義務が発生し、それを怠ることが不法行為と認められる可能性があることを示しています。
  2. 事前調査の徹底
     売主業者は土地の過去の利用状況や周辺環境に関する詳細な調査を行い、その結果を購入者に適切に説明する必要があります。特に、過去に工業用地や廃棄物処理施設であった場合、土壌汚染の可能性を十分に考慮すべきです。
  3. 規制の有無に関わらない責任
     本事例は、規制が存在しなかった場合でも、物質の危険性や生活への影響が一般に認識されていた場合には、売主の説明義務が発生することを示しています。

土地売買においては、売主は購入者の安全と快適な生活を守るために、詳細な調査と適切な情報提供を行うことが不可欠です。これにより、購入者の信頼を得るとともに、不法行為を回避することができます。本事例を参考に、土地売買における説明義務を再認識し、誠実な取引を心掛けることが重要です。

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