計画未定の計画道路による土地収用の可能性は瑕疵に当たるか

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紛争の内容

平成15年3月、買主Xは売主業者Y1から新築戸建住宅を7,760万円で購入し、同年9月に引渡しを受けました。しかし、本件土地には区の主要生活道路計画が存在しており、区は売主宅建業者Y1に対して新築建物については計画に合わせてセットバックするよう指導していました。

しかし売主業者Y1はセットバック指導に従わず、媒介業者Y2も具体的な道路計画の説明を買主Xにしませんでした。平成16年春、Xは区への問い合わせで、土地の30%以上及び建物の一部が道路計画にかかっていることを知りました。

本事例は東京高裁判決平成21年5月14日を引用しています。

損害賠償請求

Xは、道路計画の存在を前提とした適正価格との差額等2,250万円余を損害として、Y1とY2に賠償を請求しました。

各当事者の言い分

買主Xの言い分

  • 道路計画の存在は物件の瑕疵であり、説明がなかったことは説明義務違反。
  • 適正価格との差額等2,250万円余を損害額として請求。

売主業者Y1、媒介業者Y2の言い分

  • 道路計画はまだ計画段階であり、未定のものであるので説明義務はない。また、現在Xに損害は発生しておらず、仮に収用されても区から補償金が支払われるため、道路計画の存在は瑕疵とはいえない。
  • 重要事項説明書に主要生活道路の建設を示す記載をし、口頭でも説明した。

地裁判決内容

原審ではY1、Y2の説明義務違反を認め、1,120万円余の損害賠償の支払いを命じました。両者は控訴しましたが、Y2はXと和解しました。

控訴審判決

控訴審判決では、Y1の控訴を棄却しました。判決理由は以下の通りです。

  • セットバック指導の無視: 本件建物の建築当時、区は新築建物について本件道路計画に合わせてセットバックするよう指導していましたが、Y1はこの指導に従わず建物を建築して買主に引渡しました。本物件周辺のいくつかの建物は指導に従って建築されていたため、本件道路計画が実現すると、本件土地の30%以上が収用され、建物も存続の危険にさらされる具体的な可能性があると判断されました。
  • 説明義務の欠如: 本件道路計画による収用およびその可能性は、Y1、Y2からXに対して重要な事実として説明されるべき瑕疵とされました。
  • 説明の不十分さ: Y1、Y2は本件道路計画の具体的な内容をXに説明したとは認められませんでした。
  • 損害額の算定: 不動産鑑定士によると、土地収用の可能性による損失としては契約当時の土地評価額5,100万円の20%が妥当と判断され、Xの損害額は評価損1,020万円、弁護士費用100万円の計1,120万円と認められました。

まとめ

今回の道路計画のように実現性が不明な計画であっても、買主の目的に重大な利害関係を持つ事実であれば、宅建業者である売主および媒介業者の説明すべき重要な事実であり、瑕疵にあたるとされます。

適切な指導に従うこと: 売主業者は、区の指導に従った建築を行うべきでした。行政指導は法的拘束力はありませんが、それが指導される理由はかならずあります。そのため指導を無視した建築が行われると、将来のトラブルを引き起こす可能性が高まります。

具体的な説明の必要性: 宅建業者は、将来生じ得る法的問題があると認められる場合、具体的な問題点を買主に十分に説明し、その問題点を認識させてから契約を締結する必要があります。今回の事例では、主要生活道路計画の詳細について説明しなかったことが瑕疵とされました。

損害の認定: 計画段階であっても、その計画のために具体的な損害の可能性がある場合、その説明を怠ったことによる損害賠償を認めています。

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