退去時のハウスクリーニング費用。その特約は妥当ですか?

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賃貸借契約において、退去時のハウスクリーニング費用を入居者負担とする特約の有効性と、その場合の貸主の報告義務について詳しく考察します。

自然損耗を入居者負担とする特約の妥当性

法律の規定と判例

民法第621条では、入居者が通常の使用によって生じた自然損耗や経年劣化については原状回復義務を負わないとされています。しかし、賃貸借契約に特約があり、入居者がハウスクリーニング費用を負担することに合意している場合、この特約は有効となることがあります。

自然損耗と経年劣化

自然損耗や経年劣化とは、入居者が通常の使用をする中で、時間の経過とともに賃借物が劣化していく現象を指します。例えば、壁紙の色あせや床の軽微な傷などがこれに該当します。これらは賃貸借契約が終了した際、入居者が原状回復する必要のない部分とされており、通常は貸主が負担するものとされています。

ハウスクリーニング費用の特約

現在の判断基準とされる判例

東京地裁の判例(令和3年11月1日)では、特約に基づくハウスクリーニング費用の入居者負担は、有効とされています。この判例では、ハウスクリーニングによって回復される通常損耗については、その補修費用が賃料に含まれていないことを前提としており、特約による費用負担が消費者契約法第10条に違反しないと判断されました。特約が明確に合意されており、費用が妥当であれば、入居者負担は正当とされています。

この判例では、特約が貸主と入居者の間で明確に合意されており、入居者がハウスクリーニング費用の負担を認識していたことが確認されています。また、費用が妥当であると認められる場合、その特約は有効とされ、入居者に費用負担を課すことができます。

国交省ガイドラインの基準

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によれば、入居者に特別の負担を課す特約の要件は以下の3点です:

  1. 特約の必要性と合理的理由が存在すること
  2. 入居者が特約内容を認識していること
  3. 入居者が特約による義務負担の意思表示をしていること

これらの要件を満たしている特約は有効であるとされています。このガイドラインでは、入居者に対して特約の内容を十分に説明し、入居者が納得して契約を結んだことを確認することを推奨しています。

特約の具体例

特約が有効となる具体的な条件として、例えば以下のような内容が含まれます:

  • ハウスクリーニング費用の具体的な金額や範囲を明示すること
  • クリーニングが必要となる具体的な理由や範囲を説明すること
  • 入居者がこれらの内容に同意し、契約書に署名すること

これらの条件を満たすことで、特約の有効性が認められ、入居者にハウスクリーニング費用を負担させることが可能となるとされています。

ハウスクリーニングの実施報告義務

退去時のハウスクリーニング代を入居者に負担させることは可能ですが、クリーニングは退去後に行われるので、費用を負担した入居者はクリーニングが行われたかどうかはわかりません。このような場合に、貸主は入居者に対してハウスクリーニングの報告をする義務はあるのでしょうか?

貸主が入居者に対し、ハウスクリーニングの実施状況や内容を報告する義務は、契約書にその旨が記載されていない限りありません。前掲の地裁判例では、特約に基づく費用負担が明示されている場合、貸主は報告義務を負わないとされています。

実務上の対応

実務上、退去後に新しい入居者が入居するためにハウスクリーニングが行われることが一般的であり、賃貸借契約書に明確な報告条項を設けていない限り、貸主が入居者に報告する義務はないと判断されます。

東京地裁の判例の詳細

判例では、特約に基づくハウスクリーニング費用が妥当な金額であると認められた場合、入居者に報告する義務はないと判断されました。この判例では、ハウスクリーニングが実施されない事態は想定しにくく、入居者に対して報告する必要性が乏しいとされています。また、入居者の退去後にクリーニングが実施されることは常識的な行動であり、貸主が報告義務を負うものではないと判断されました。

まとめ

退去時のハウスクリーニング費用を入居者負担とする特約は、適切な合意がなされている場合に有効であると考えられます。しかし、特約に基づく費用負担を入居者に認識させ、納得させることが重要です。