更地販売における地中埋設物の問題と宅建業者の説明義務

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売買の対象更地に地中埋設物等が存在した場合における宅建業者である売主及び媒介業者の損害賠償責任

売買契約において地中埋設物が存在する場合、宅建業者(売主)と買主側の媒介業者の説明義務違反が問題となることがあります。ここでは、実際に発生した事例を通じて、この問題について詳しく解説します。

本事例は東京地裁判決平成30年3月29日を引用しています

紛争の内容

本件は、売主が土地を解体した上で売却し、買主がその土地に建物を建てようとした際、地中埋設物の存在が確認された事例です。

  • 売主Y:既存建物を解体して土地を売却
  • 買主X:土地を購入し、新たに建物を建てようとする
  • 媒介業者Z:売買契約を仲介

この事例では、売主である宅建業者が解体後の土地を売却する際に地中埋設物の存在について説明しなかったため、買主が損害を被ることとなりました。

紛争の経緯

  1. 売主Yは、既存建物を建設会社Aに依頼して解体した上で土地を売却しました。
  2. 買主Xは、媒介業者Zの仲介でその土地を購入しました。
  3. 土地引渡しから約5年後、買主Xが建物を建てるために土地を調査したところ、地中埋設物が確認され、予想外の費用が発生しました。

具体的には、買主Xが建物を建てるために地盤調査を行った際、解体された建物の土間スラブやコンクリートガラ、鉄骨、井戸などの地中障害物が発見されました。このため、当初予定していた地盤改良工法では対応できず、高額な費用を要する別の地盤改良工法を採用する必要が生じました。

各当事者の言い分

買主Xの主張

  • 売主Yは、既存建物が存在した状態で土地を購入しており、その従業員が取り壊しに立ち会ったため、地中埋設物の存在を把握していたはずである。
  • 売主Yは、地中埋設物が存在しない旨の物件状況報告書を提出したため、説明義務違反及び瑕疵担保責任がある。
  • 媒介業者Zは、買主Xが自宅を建築する目的で土地を取得することを知っていたため、地中障害物の存在について調査・告知する義務があった。

売主Yの主張

  • 地中埋設物の存在は認識していなかったため、説明義務違反はない。

媒介業者Zの主張

  • 地中埋設物の存在を認識しておらず、調査能力もないため、説明義務違反はない。

裁判所の判断

裁判所は、売主Yの説明義務違反を認め、媒介業者Zの調査・説明義務違反を認めませんでした。

売主Yについて

  • 地中埋設物の存在を知っていたとは認定しなかったが、売買の対象となる土地の状況について正確な情報を告知・説明する義務を負っていた。
  • 地中障害物が残存していることを把握し得たにもかかわらず、建設会社Aと適切に連絡を取らず、物件状況報告書を作成したため、説明義務を怠ったとして損害賠償責任を認めました。

媒介業者Zについて

  • 売買契約を締結する時点で土地は既に更地化されており、売主Yから敷地内残存物はない旨の説明を受けていたため、独自の追加調査を実施する義務はないと判断しました。

まとめ

この事例から学べることは、宅建業者が土地を更地化して売却する場合、以下の点に注意が必要です。

説明義務の重視

売主は、地中埋設物の有無を正確に把握し、買主に適切に説明する義務があります。特に、売買契約書や重要事項説明書において正確な情報を提供することが求められます。既存建物を解体して販売する場合は、地中埋設物が後に発見された場合、売主が説明義務を果たしていなかったと認定される可能性が高いです。

この事例では、裁判所が売主の説明義務違反を認めた点が重要です。売主である宅建業者は、地中埋設物の存在を知らなかったとしても、知り得る立場にありますから、適切に調査・説明を行わなければならないことが強調されました。

媒介業者の役割

媒介業者は、売主から提供された情報を基に説明する義務がありますが、更地化された土地については追加の調査義務までは負わないと判断されました。しかし媒介業者は、売主から受け取った情報が正確かどうかを確認し、必要に応じて追加調査を行うことも検討するべきです。

地中埋設物問題の防止策

更地化工事を実施する際、工事業者と密に連絡を取り、工事の進捗状況を把握します。工事完了後には、再度地中調査を行い、地中埋設物の残存がないことを確認します。付きっきりになる必要はありませんが、少なくとも工事完了前の根切りに立会い、地中障害物がないことを確認すべきでしょう。


売買契約において、地中埋設物の存在は大きな問題となり得ます。特に、宅建業者は土地を売却する際、地中埋設物の有無を正確に把握し、買主に適切な情報を提供する責任があります。このようなトラブルを未然に防ぐためには、売買契約の際に十分な調査と正確な説明を行うことが不可欠です。

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