投資物件の駐車場収入に関する不正確な広告が引き起こした紛争事例
投資用物件の売却において、駐車場収入を得られるとの広告表示が実際とは異なるために発生した紛争事例をご紹介します。このケースでは、条例により駐車場として使用できない部分が存在するにもかかわらず、駐車場収入が得られると誤って広告され、結果として買主が損害を被りました。
紛争の内容
事例背景
- 買主Xは、2015年12月28日、売主Y1から投資用アパートを5,680万円で購入しました。この物件には4室のアパートとその前面の駐車場が含まれていました。
- 媒介業者であるY2は、売主の宅建業者Y1からの情報に基づき「希少駐車場2台分付」と記載した販売広告を作成し、Xに送信しました。広告には、4室のワンルームと駐車場2台分の想定賃料が記載されていました。
- しかし、購入後に1台分の駐車場スペースが「窓先空地」として東京都建築安全条例で使用が制限されていることが判明しました。このため、実際には駐車場1台分の収入しか得られませんでした。
本事例は東京地裁判決(平成21年4月13日)から引用しています。
窓先空地とは
東京都建築安全条例では、共同住宅について、道路または窓先空地に直接通じる窓を設けなければなりません。
例えばこのような共同住宅においては、道路に直接通じる避難経路に窓を設けて、空地を確保しなければなりません。ここには避難の障害になる様なものを置くことは出来ません。フラワーポットや物置もダメです。
この図の場合では、一番左の部屋は、角部屋で窓が2方向にあり、一つが直接道路に面しています。そのため、一番左の駐車はOKとなります。
しかし後の2台は窓先空地を潰していますので、避難経路の確保がされていません。このような駐車利用はNGとなります。
各当事者の主張
買主Xの主張
- 駐車場収入について不正確な情報を提供されたために損害を被ったとして、売主Y1および媒介業者Y2に対し損害賠償を請求しました。
- 具体的な損害として、収益減少による物件価格の下落分および精神的損害を挙げました。
売主Y1・媒介業者Y2の主張
- アパートの前面には物理的には2台の車両を駐車できるため、広告内容に虚偽はないと主張しました。
- 想定賃料は保証されているものではなく、経済的損害は発生していないと反論しました。
裁判所の判断
結論
- 裁判所は、Y1およびY2の説明義務違反を認め、買主Xの精神的苦痛に対する慰謝料として60万円の支払いを命じました。
- ただし、収益減少による物件価格の下落分については、経済的損害としては認められませんでした。
理由
- 駐車場として利用できない部分について正確な情報を提供せず、誤認を生じさせたことが不法行為と認定されました。
- 精神的苦痛については、正確な情報に基づいた投資判断の機会を失ったことが理由とされました。
まとめ
宅建業者は膨大な建築関連法規や条例に対応する必要がありますが、特に購入動機に直接影響する規制については確実に調査し、購入者に正確な情報を提供する義務があります。購入者が正しい判断を下せるように、誠実な情報提供が求められます。
特に収益物件においては、限られた用地を最大限利用するという動機が働きますので、現況のみを見て経済利益を取りに行くことがあります。売主業者が開発業者ではなく転売の売主だった場合には、建築基準法や規制条例を知らずにやってしまいそうな事案です。
この事例は、投資用物件の販売において、広告表示がいかに正確でなければならないかを示しています。特に収益物件に関しては、購入者の期待を裏切らないように、法令や条例に基づいた正確な情報を提供することが重要です。
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