再建築不可物件で柱一本残したリフォームは可能か

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再建築不可物件でも、柱一本残せばリフォームとして建替えられるのでしょうか?

これはかなり難しいと考えていいでしょう。「柱一本残した建て替え」という言葉は不動産業界でも使われていますが、実際には柱だけ残すリフォームではなく、壁の材質を変えたり、クロスの変更や設備の入れ替えで対応していることがほとんどではないでしょうか。

かつてテレビでリフォームを扱った番組があり、柱を残して派手に解体した映像が放送されて「ここまでやってもリフォームなんだ・・・」と感じた記憶があります。

これらの誤解は建築基準法第6条第1項第4号の解釈から始まったと思われます。

建築基準法第6条第1項第4号の「4号特例」とは

条文は複雑ですが、4号特例は簡単に言うと一般的な戸建ての大きさの建物であれば、大規模修繕と大規模模様替では建築確認が不要であるという特例です。ここから再建築不可物件でも柱一本残した建て替えが可能だという解釈が生まれたものだと思います。

ところで修繕と模様替とは、どのような行為でしょうか。

修繕…既存の材料と同じ材料を用いて行う工事です。既存外壁がモルタル仕上げであれば、モルタル仕上げで塗りなおすような工事です。

模様替…既存の材料とは異なる材料を用いて行う工事です。例えば瓦葺きをスレート葺きに変更するような工事です。

テレビでやっていたような派手なリフォームは建築行為とみなされる可能性が高いので、再建築不可物件では難しいと思われます。

建築基準法の目的は「建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする」ことです。間口2m以下の敷地に建物を建てさせないという理由は安全上の理由がありますので、建築確認が不要なら好き勝手に工事できると、思い込んでしまうと行政処分の対象となる可能性がありますので注意しましょう。

再建築不可物件の売買をめぐる裁判

事案の説明

買主は、売主業者との間で都内の土地付き中古戸建て物件を購入契約し、媒介業者に媒介手数料を支払った。
本物件は、建物が建っている部分の土地1と、公道に繋がる通路部分の土地2の2筆からなる旗竿地であった。そして、以前に作成された地積測量図によれば、土地1と土地2の接合部の幅が2mと記載されていた。なお、建物は、平成3年に当時の土地所有者が建築確認を得て新築したものであった。

しかし、本物件の今回の販売に際して作成された実測図では土地1と土地2の接合部の幅が1.98mとの結果になった。このため、媒介業者は、本件売買契約の重要事項事前説明書において、「敷地と道路との関係による制限」の箇所に「対象不動産は建築基準法に定める接道義務をみたしていないため、建築物の建築はできません。また、現在ある建築物については、増・改・再建築はできません。」と記載し、買主に説明した。買主は以下の通り主張して、売主業者に対して本件売買契約の取消しを、媒介業者に対して本件媒介契約の取消しの意思表示をし提訴した。

判決の要旨

買主は、媒介業者が重要事項説明を行う中で、「柱一本残せば建替えられる」との説明を受けたと主張する。
しかし、接道義務を満たしていないという説明をしながら、柱1本残せば建て替えられるという説明をすることは、矛盾した説明をすることとなり、説明を受ける買主を混乱させることになるから通常は避けるものと思われることからすると、客観的な証拠のない限りそのような説明を行ったとは認定し難いところ、これを認めるに足りる客観的な証拠はなく、媒介業者が重要事項説明においてそのような説明をしたと認めることはできない。

買主は、他の不動産業者が査定した本件不動産の価格査定書において、近隣の不動産の取引事例との比較によるプラスポイント・マイナスポイントを査定した結果、本件土地は未接道なため建築不可となることを指摘した上で、査定価格を1000万円としていることを根拠として本件売買契約が暴利行為であると主張する。しかし、当該査定書では、各々の要素をどのように考慮し、どの程度の減価要因としたのかは不明であり、買主の主張は採用できない。

買主は、本件建物に係る平成3年建築確認は接道義務を満たしておらず無効であるのに、平成3年建築確認がされていることを告知したことが不実の告知に当たると主張する。しかし、建築確認は行政処分であって、これが取り消されるか、あるいは重大かつ明白な瑕疵があって無効であるといえない限りは有効なものであるところ、本件建物につき特定行政庁において平成3年建築確認が適法なものではないとして違反建築物として取り扱われていることを認めるに足りる証拠はない。
そうすると、本件売買契約につき、平成3年建築確認がされているということを前提として手続が進められたことに問題はなく、したがって、この点について不実の告知があったとはいえない。

買主は、媒介業者が本件不動産を売り出すにあたり、本件広告に本件不動産が接道義務を満たしていないことを記載していなかったことをもって説明義務違反があったと主張する。しかし、本件売買契約の取引全体を通してみた場合には接道義務を満たしていないことの説明があったといえ、説明義務違反があったとはいえない。

裁判所は上記のように判示して、買主の請求を棄却しました。


裁判では、媒介業者が「柱一本残せば建替えられる」と説明したという客観的な証拠もないとされていますが、不動産業界では建築確認なしにリフォームが出来るという話はよく聞きます。そこから違法建築でも建築確認なしで工事できるのだと曲解が生まれたのでしょう。

この曲解の元となった建築基準法第6条が令和7年4月1日に改正施行され、建築確認の審査が省略される範囲が狭くなります。しかし、そもそも建築確認が不要だと思っていたらそのまま工事に着手してしまうわけですから、大規模リフォーム工事が終わった後に違法だと指摘される可能性もあるのです。これは怖いですね。