口頭説明の誤りによる責任

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東京地裁判決平成24年5月31日における紛争事例

① 買主Xの購入

平成22年2月、買主Xは売主宅建業者Y1から、媒介業者Y2の媒介により、東京都目黒区内にある7区画に分割された分譲地の1区画(本件土地)を3,870万円で購入しました。

② 重要事項説明書の記載

売買契約書及び重要事項説明書には以下の記載がありました。

  • 地盤調査および地盤補強工事の必要性: 本物件において、建築物を建築する際に、建築を依頼した施工業者等に地盤調査、地耐力調査を要請されることがあり、その結果によっては地盤補強工事等が必要となる場合があります。これらの調査費用、及び地盤補強工事等が必要になった場合に発生する費用については買主負担となります。
  • がけ条例の適用: 本物件は、東京都安全条例第6条(がけ条例)の制限を受ける場合があります。

③ 口頭説明の誤り

買主Xは、建築予算を見込んでいたため、重要事項説明を受けた際にがけ条例の適用の可能性を媒介業者Y2に確認しました。媒介業者Y2の担当者は「多分大丈夫だろうが、正確なところは売主宅建業者Y1に聞いてほしい」と回答しました。そこでXは売主宅建業者Y1に対し、がけ条例の適用があるかどうかについて質問したところ、売主宅建業者Y1は「仮にがけ条例の適用があっても問題なく対応可能である」と回答しました。

また、Xが地盤改良工事費用について質問した際、売主宅建業者Y1は「大丈夫(工事は必要ない)だろう」と回答しました。

④ 設計依頼後の判明事項

Xが一級建築士に本物件上に建築する建物の設計を依頼したところ、次の点が判明しました。

  • 地盤が軟弱であり、地盤補強工事として777万円が必要。
  • がけ条例の適用により木造建物は建築できず、RC構造(鉄筋コンクリート)とする必要があり、追加工事費用として833万円が必要。

各当事者の言い分

買主Xの言い分

  • 説明義務違反と瑕疵担保責任:
    • 重要事項説明書の読み合わせ時に、がけ条例の適用と地盤改良工事の必要性について質問した際、「がけ条例の適用があったとしても問題なく対応できる」「地盤改良工事についても大丈夫だろう」との口頭説明があったため、売主宅建業者Y1および媒介業者Y2に重要事項説明義務違反があり、隠れた瑕疵として瑕疵担保責任が発生する。
  • 損害賠償請求:
    • RC構造にする追加工事費用833万円のうち633万円と地盤補強工事に要する777万円、その他の損害(慰謝料、追加設計費用、住宅ローン利息相当額など)の賠償を請求する。

売主宅建業者Y1、媒介業者Y2の言い分

  • 説明責任の否定:
    • 売買契約書及び重要事項説明書には、本件土地について「がけ条例の適用がある可能性」および「地盤補強工事等の費用は買主負担」とする特約が明記されているため、責任はない。
  • 説明義務の範囲:
    • 媒介業者としての説明義務は、本件土地についてがけ条例適用の可能性を告知することであり、それで十分であるから説明義務違反はない。

本事例の問題点

  1. 重要事項説明書の説明内容:
    • 重要事項説明書に「可能性がある」との指摘のみでは説明として十分か。
  2. 口頭説明の信頼性:
    • 重要事項説明書の内容と異なる口頭説明がされた場合、どちらが優先されるのか。

本事例の結末

判決内容

  • がけ条例の説明義務違反:
    • 売主宅建業者Y1および媒介業者Y2について、がけ条例の適用に関する説明義務違反(不法行為)が認定され、建物追加工事費用分の633万円全額、慰謝料150万円、弁護士費用の一部等も損害として認められ、総額1,000万円強の支払いが命じられました。
  • Y1の瑕疵担保責任:
    • 売主宅建業者Y1については、別に瑕疵担保に基づく損害賠償責任として地盤補強工事費用750万円の支払いが命じられました。

説明義務違反の理由

  • 不十分な説明: 本件土地は目黒区からがけ条例の適用があると判断される可能性が高いにもかかわらず、Y1・Y2の説明はその適用の有無に関わらず建物の建築費用に影響しないとの誤解を生じさせるものでした。
  • 誤解を招く説明: 地盤補強工事等の費用についての質問に対し、「大丈夫だろう」という回答や参考プランに「地盤改良費不要」との文言があったことから、売主宅建業者Y1の説明は実際とは異なるものでした。

まとめ

重要事項説明書には、単に「可能性がある」という抽象的な記載ではなく、具体的な可能性やその影響を明確に記載する必要があります。例えば、「がけ条例の適用がある場合、建築物の構造に制限がかかり、追加の工事費用が発生する可能性が高い」といった具体的な情報が求められます。

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